財源不足が言い訳≠ノなってはならない

ところが、この点においても安倍政権の姿勢を見ると、首をかしげざるを得ない。歴代政権も同じではあったが、財源不足を理由に、おざなりの対策でお茶を濁し続けているのだ。

政府や与党は「新規財源がなければ、予算のつけようもない」と公言してはばからない。消費税増税に逃げ込み、「増税が先送りされたから、やりようがない」と決め込んでいる。財源不足を免罪符として開き直っている印象すら受ける。

少子化とは、国家を根底から揺るがす「静かなる有事」である。財源不足を言い訳≠ニして後回しにされることがあってはならない。

逼迫した国家財政を考えれば、青天井に投入せよとは言わない。ただ、国の意志として真っ先に国家予算を確保し、少子化対策に取り組むのが政治を担う者の責務であろう。財源が足りないなら、他の事業を廃止、縮小してでも税財源を獲得すべきだ。

税財源の確保を諦めたのだろうか。「教育国債」や「こども保険」といった安易な財源策に逃げようという姿勢も見られる。こうした手法は、財源を見つけようともせず、何もしないでいるよりはマシかもしれないが、「新規財源を獲得できたら行う」という思考から脱するものではない。

少子化をめぐる状況の深刻さを考えれば、一般財源で思い切った予算確保をしないかぎり、政府の本気度は国民に伝わらないだろう。いつまで、このような姿勢をとり続けているつもりなのだろうか?

政府は「国民希望出生率1.8」の実現を掲げているが、安心して産み、育てられる社会を取り戻さなければ、出生数の回復など望めるはずもない。政権が悲壮な覚悟をもって取り組んでこそ、「少子化に歯止めをかけなければ!」という社会の気運も芽生えるというものだ。

対応が年々遅れている間にも、少子化は確実に進行してゆく。この危機を私が「静かなる」と形容した一つの理由が、この点にある。

今ほど、政治家たちの姿勢と力量が問われているときはない。