国から国民全員がただでお金をもらえるとしたら、どうなるでしょうか。一体何のことなのかといぶかしく思う方もいるかもしれません。こんな突拍子もないアイデアが最近、まじめに議論され、実証実験も始まっています。ベーシックインカムという、れっきとした社会保障政策です。格差拡大や貧困という世界共通の課題を解決するための手段として注目されるベーシックインカムの実態に迫ります。

フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏がことし5月、母校のハーバード大学の卒業式に招かれた際の講演で、こう語りました。

「ベーシックインカムを導入し、みんなが新しいことに挑戦できるようにすべきです」

1月に開かれた世界各国の政治や経済界のリーダーが一堂に会する世界経済フォーラムの年次総会、いわゆる「ダボス会議」でもベーシックインカムが議論されました。格差拡大や貧困、国民の分断や内向き指向。世界に垂れこめる暗雲はしばしば資本主義のゆがみや限界とも指摘され、どうしたら問題を解消できるかとリーダーたちは真剣になっているのです。

注目を集めているベーシックインカムとはどのような制度なのでしょうか。
http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/still/biz_0807_02_kaisetu.jpg

日本語では「基本所得」と訳されますが、「すべての人」に「無条件」で「毎月、一定額」を支給するというのが特徴の社会保障政策です。生活保護や失業手当などとの最大の違いは「無条件」ということです。生活保護や失業手当を受給するためには所得や仕事の有る無しなどが問われ、行政に書類申請することが必要です。しかしベーシックインカムは、何の制限もなく、自動的に国からお金が振り込まれる仕組みとなっています。お金はすべての人が対象ですから、生活に困っている人だけでなく、収入の安定した人も、子どもにも全員に給付されるというのが本来の仕組みです。これが「“ただ”でお金をもらえるとしたら」というタイトルの意味です。

日本も深刻 貧困問題
日本も格差や貧困はひと事ではない深刻な問題です。ことし3月時点で生活保護を受けている世帯は1人暮らしの高齢者の増加を背景に164万世帯余りとなり、過去最多。しかも、日本には生活保護を受け取らず、それ以下の水準で暮らしている人の数が800万人とも1000万人とも言われており、行政の支援が届いていない、統計には表れない貧困の問題が深刻だとされています。
以下ソース
http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0807.html