☆文科行政 失敗繰り返すのか☆
=『朝日新聞』2017年6月3日朝刊〈声〉=
文筆業 ○○ ○○(京都府 68歳)

 加計学園が獣医学部新設を認められた国家戦略特区について、安倍晋三首相は「既得権益の岩盤を打ち破る」と言っています。
私は元大学教授ですが、文部科学行政の「規制緩和」は大きな過ちを起こしてきたと思っています。

 話を高等教育に限定します。一つは法科大学院です。弁護士などの需要が増えるとの想定から他の職種を経験した社会人が試験を受けられ、
司法試験合格者を増やす道をつくりました。理念としては歓迎されるものでしたが、需要予測は外れて失敗となりました。

 二つ目は文科系の大学院拡充です。大学院生、博士が増えましたが、就職の当てのない悲惨なオーバードクターがあふれました。
30歳以降になってからです。損をしたのは彼ら若者、そして国民。得をしたのはその職に就いた教授たち。教え子の不幸で飯を食うという強烈な皮肉でした。

 今回の獣医学部。果たして社会的な需要は十分あるのでしょうか。この点を詰めぬまま、官邸の意向で強引に進めたということが、
今回の最大の問題です。どうやって将来に責任が取れるのでしょうか。