日立製作所は、今後2年間で買収・合併(M&A)を活用しながら技術分野のコンサルタントやシステムエンジニアなどの人材を最大約6000人増員する計画だ。あらゆるモノがネットでつながるIoT技術を活用し顧客の業務を効率化するサービスの基盤「ルマーダ」を世界的に強化するのが狙い。

  日立の西山光秋CFO(最高財務責任者)は29日のインタビューで、中期経営計画の最終年度となる2018年度末までに、同社が「グローバルフロント」と呼ぶ営業やコンサルティング、開発や保守業務を中核となって担当する人材を、世界全体で16年度末の約3万6000人から約4万2000人まで約17%増やす考えだと話した。

ルマーダは日立が販売する発電設備や産業用機器、鉄道車両などあらゆる製品からデータを収集し、効率的に運用するための制御方法などのソリューション提供の基盤。同社はルマーダを活用したIoT事業を今後の成長の柱に据えている。

  同社と競合する米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなども、販売する機器にIoT技術を組み合わせるソリューション提供事業を拡大しており、この分野で争いが激化している。日立は18年度までの3年間でルマーダの研究開発などに1000億円を投じることを計画しており、各国大手メーカーとの競争での優位性確保を目指している。

  西山氏はこの分野での事業拡大のためには「コンサルタントやシステムエンジニアなどの増員が急務」と指摘。海外事業を強化するため新規採用のほかトレーニングや、人材の配置転換などに積極的に取り組んでいるものの、必要な人材は「全然足りない」という。「良いターゲットがあればこの種のM&Aは必要」とし、コンサルティング会社や情報システムの構築を請け負うシステムインテグレーション関連会社などが候補になると話した。

1兆円をM&Aに

  同社は18年度までの3年間に約1兆円をM&Aに費やす方針を表明している。M&Aについて「特に海外向けで、さまざまな分野で常に検討している」状況だという。対象になるのはルマーダを世界的に展開するのに必要なリソースの確保、販売チャンネルの拡大、保守・サービス事業の強化といった基準のいずれかに該当するものになると話した。

  同社は過去2年間でイタリアの鉄道関連企業、欧州・中東で医療機器販売を手掛けるトルコ企業、米国の空気圧縮機メーカー、英国ではエレベーター保守管理会社などを買収している。西山氏は、売上高を積み上げるためだけのM&Aはしないとの認識を示した。M&Aの資金として8000億円程度の余力を残しているものの、この2年で必ず使わなければならない予算とは認識していないと話した。

  一方で、西山氏はM&Aと並行して進めてきた事業の売却について「計画していた優先度の高いもの、単位の大きい上場会社などはある程度できた」との認識を示した。今後も引き続き、ルマーダ関連事業との親和性なども検討しながら取り組む考えを示した。同社は16年に日立物流と日立キャピタルを、17年には日立工機を売却した。このほか、日立国際電気の売却について17年4月に合意している。

  岩井コスモ証券の西川裕康シニアアナリストは、ルマーダを活用した事業を進める上で「社内外での情報の蓄積や専門家の不足は明白で、その方面に強い会社や部門を取り込むためのM&Aは必要な行動」との見方を示した。一方で総合電機メーカーとして国内で最初に取り組んだ、グループ事業再編のための売却は、「思い切った経営判断で、これまでは成功させている」と評価した。利益率が想定通り向上していないことが懸念材料だと指摘した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-30/OSAQT86S972B01