http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC29H2S_Z20C17A5EA2000/

2017/5/29 21:11
 【ソウル=山田健一】韓国サムスン電子は最先端の半導体メモリーを手掛ける中国の工場に約1兆円を投資し、2019年をメドに生産能力を現在の2倍に引き上げる。1ライン単位で1兆円を投じるのはサムスンの中国での投資では過去最大級となる。ライバルの東芝がメモリー事業子会社の売却に手間取る中、中国を韓国と並ぶ最先端品の量産拠点に育ててシェア首位を固める。

 増産するのはスマートフォン(スマホ)などに搭載し画像や文書を記憶するNAND型フラッシュメモリー。内陸部の西安工場(陝西省)に第2ラインを設ける。生産能力は原料のシリコンウエハー換算で月産10万枚程度。第1ラインと合わせた生産能力は計22万枚になる。年内に着工する。

 19年までの3年間に10兆ウォン(約1兆円)程度を投資する。スマホの高性能化で容量の大きいメモリーが求められており、北米ではデータセンター増設に伴う引き合いが強い。指標品の大口価格は1個3ドル弱と1年前に比べて5割以上高い。

 東芝子会社の東芝メモリに米ウエスタンデジタル(WD)や米ファンドなど多数の企業が買収を持ち掛けているのはフラッシュメモリーの足元の高価格に加え、中期的な市場の伸びを見込んでいるためだ。韓国では「東芝が揺らぐ今が攻勢をかける好機」(証券アナリスト)との声も漏れる。サムスンはDRAMや液晶パネルでも日本勢の投資が滞っている時期に大型投資を重ねてシェアを引き上げた経緯がある。

 西安工場は記憶素子を重ねる3次元と呼ぶ技術を使う。3次元品は耐久性や消費電力の低さに強みがあり、「平均すると2次元品より価格が高い」(日本国内アナリスト)。ただ新しい技術のため歩留まり(良品率)が低い。需要に見合う量が市場に供給されておらず、サムスンは投資の効果が大きいと判断した。

 韓国企業は在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備を巡り中国政府の経済報復に悩まされている。韓国でも中国への技術流出の懸念は強いが、サムスンは中国重視の姿勢のアピールを優先したようだ。