次世代自動車としてトヨタなどが販売し、水素を燃料に使う燃料電池車の国内登録台数が、発売から二年がたった昨年末現在で千五百台弱にとどまっていることが関係者への取材で二十二日、分かった。

 車体が七百二十万円超と高価な上、「二〇二〇年度に百六十カ所程度」が政府目標である水素ステーションの数も現在、九十カ所と少ないことなどが理由とみられ「二〇年に四万台程度とするとの国の目標達成は厳しい情勢だ」(政府筋)という。

 関係者によると、トヨタの燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の登録台数は一四年の発売から昨年末までで約千三百七十台。ホンダが昨年からリース販売をしている「クラリティ フューエルセル」は約百十台だった。

 業界関係者によると、燃料電池車に水素を供給する水素ステーションは、一カ所の建設費用が約四億円に上る。採算が取れるには一カ所当たり顧客として約千台の燃料電池車が必要とされるなどの状況もあって、建設が進んでいない。

 経済産業省など産学官の有識者らでつくる水素・燃料電池戦略協議会が昨年三月にまとめた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」は「燃料電池車は二〇年までに四万台程度、二五年までに二十万台程度」とするなどの目標を明示。水素ステーションは「二〇年度までに百六十カ所程度、二五年度までに三百二十カ所程度」とされている。

 経産省資源エネルギー庁は「燃料電池車への需要はあり、今後、メーカーの生産能力向上も期待できる。普及台数やステーションの目標は野心的ではあるが、現実的な目標だと考えている」(新エネルギーシステム課)としている。

 燃料電池車は走行時に温室効果ガスを出さない次世代のエコカーとして官民が普及を進めている。

<燃料電池車> 水素と酸素の化学反応によって電気をつくる燃料電池の力で進む自動車。運転中には水しか出ないため、次世代のクリーン自動車として開発が進んでいる。トヨタが2014年12月、世界初の一般向け燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発売した。トヨタは年間の生産台数や目標を明らかにしていないが、15年1月に「17年には3千台程度に拡大する」と発表している。1台720万円超と高価格な上、水素の生産や輸送、ステーションの整備などの低コスト化が課題。

2017年5月22日 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201705/CK2017052202000229.html