http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9044

いま、スポーツに限らず政治、経済、芸能とあらゆるジャンルの中で日本を最も沸かせているガチンコバトル
と言えば、「小池百合子vs石原慎太郎・新旧東京都知事対決」だろう。都民の食の安全にかかわる市場移転問題が争点だけに
無責任に面白がるわけにもいかないが、ともに数々の修羅場をくぐってきた老獪な政治家同士の激突は下手な格闘技以上に
迫力たっぷり。7日から開幕した3年に一度の野球世界一決定戦WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が霞んでしまわないようにと、余計な心配までしてしまう。

 小池現都知事と石原元都知事の間で争点になっている築地から豊洲への市場移転問題、実はプロ野球界にも
大きな影響を及ぼす可能性を秘めていた。石原氏は都知事時代、市場移転と平行して東京オリンピックの2016年開催を計画、
公に表明して大いに都民の期待をあおった。ここから先はあくまでも水面下でささやかれていた情報だが、
五輪誘致までに市場の豊洲移転が完了したら、築地の市場跡地にオリンピック用の新球場を建設、
五輪のあとにはこの球場が巨人の新本拠地球場となる、という青写真が描かれていたと聞く。
 巨人は当時から、東京ドームに代わる自前の新球場を持とうという計画を練っていた。1988年の開業時には
最新鋭の設備を誇った日本最初の室内球場も老朽化が著しく、12球団の本拠地で一番狭いと言われ、
最も本塁打が出やすいと投手たちから悪評を買うほどに評価が急落。加えて、株式会社東京ドームという別会社が所有しているため、
年間約25億円と言われる高額なレンタル料も払わなければならない。そのころの内情を、ある球団関係者がこう明かしている。

 「当時、どこにどんなタイプの球場をつくったらいいか、球団内部で調査、研究していたのは事実ですよ。
東京ドームはレンタル料が高い上、物販収入も思うように入ってこないというネックがある。例えば、選手の名前を使った
キャラクター弁当一つ取っても、ウチではなかなかつくれなかった。球団や選手のロイヤルティーのほか、
ドームに収めるロイヤルティーを価格に乗せたり、そのせいで他球場よりも値段が高くなったり、
いろいろな問題をクリアするのに手間取りましたから。でも、自前の球場が持てれば商品開発もスムーズにいく。
他球団に後れを取ることなく、たくさん魅力的なグッズを売り出せる」

 読売グループの元幹部社員も振り返る。
 「あのころ考えられていた築地の新球場は、天然芝で5万人収容、イメージとしては広島のマツダスタジアムに近かった。
なぜドームじゃなく、天然芝にするのかというと、松井秀喜に監督として戻ってきてもらいたかったからさ。松井が現役時代、
東京ドームの人工芝を批判していたのは有名な話。あの外野を走り回っていてヒザを痛めたことも、巨人への復帰を前向きに考えられない一因だろう」

小池都知事は野球に興味があるのか?
 東京都としても、築地に巨人の本拠地球場ができれば様々なメリットが生じる。築地で巨人戦が行われれば、
試合後に球場から出てきたファンが、汐留、新橋、そしてもちろん銀座へドッと繰り出すのは確実。周辺地域を活性化させ、
大きな経済効果をもたらすことも十分期待できる。オリンピックが行われたあと、様々な競技施設が不良債権化することが問題視されているが、
オリンピック用の新球場を巨人が買い上げれば、将来も金を生むスタジアムになる可能性もあった、はずだ。
 いまとなってはすべて絵に描いた餅≠ナある。ただ、石原都知事時代、そういう夢のある話が取り沙汰されていたことはしっかりと記しておきたい。
市場移転問題がどう決着するのかはわからないが、もし築地の跡地に巨人の本拠地球場ができれば、
巨人ファンにも相手球団のファンにもいろいろな楽しみが増える。近い将来、小池現都知事にはぜひご検討いただきたいものだが、
はて、あの人は野球に興味はあるんだろうか……?