http://gqjapan.jp/life/business/20170227/hydrogen-water

飲料メーカーにとっては業績を左右するほどのヒット商品だった「水素水」。
しかし、そのブームは、たったひとつの報道発表で崩壊した。その煽りを大いに受けた整水器販売の日本トリムの言い分は──。

恨み節あふれる、業績の下方修正だった。整水器販売を手掛ける日本トリムは1月30日、
第3四半期(2016年4〜12月期)の業績を発表すると同時に、2017年3月期通期の業績見通しを引き下げた。
従来予想の売上高173億円(前期比13.2%増)、営業利益34.7億円(同11.1%増)を、売上高153.5億円(同0.5%増)、
営業利益30.2億円(同3.3%減)にするというものだった。
同社は1982年6月、電解水素水整水器の製造および販売を目的として設立された。その後全国各地に営業拠点を広げ、
2004年3月に東証1部へ上場。現在整水器では国内トップシェアを誇る。150億円余りの売上高のうち、整水器販売を
中心とするウォーターヘルスケア事業が約95%を占めており、まさに水素水でのし上がってきた会社だ。

それだけに悔しさが大きいのか、リリースでは業績を下方修正した理由をこう述べている。
「昨年5月の産経ニュースを発端とする水素水に対する否定的な一連の報道の影響からは回復に向かう基調でした。
しかし、昨年12月に国民生活センターから水素水に関する報道発表がなされ、その風評による影響が新たに発生し、
販売効率が下がる結果となりました」。同社の株価は下方修正を公表した翌日に7%近く下落(終値ベース)、その後も膠着状態が続いている。

水素水ブーム、崩壊の契機
昨年5月の産経ニュースとは「美容、ダイエットと何かと話題の『水素水』 実はかつてブームを巻き起こした『あの水』と同じだった…」
という記事。昨今水素水が注目されているが、一時期ブームとなったアルカリイオン水と基本的に中身は変わらない、といった内容だった。
ただ、この記事に日本トリムの名前は登場していない。直接的なきっかけは、独立行政法人国民生活センター
が2016年12月15日に報道発表した「容器入り及び生成器で作る、飲む『水素水』──『水素水』には公的な定義等はなく、
溶存水素濃度は様々です──」という文書だ。
同センターは、水素水に関する相談が2011年度から2016年9月末までの間で累計2260件に上ったことを踏まえ、
水素水に関する調査を実施。飲用水として販売されている水素水10銘柄と水素水生成器9銘柄の計19銘柄について、
商品の表示や広告のあり方、溶存水素濃度(水に溶けている水素ガス〈水素分子〉の濃度)をテストした。
このテストは、水素水の機能を科学的に分析することよりも、表示や広告のあり方、表示どおりの水素濃度があるかなど
を調べることを主眼としたものだった。テストでは溶存水素濃度が表示値より測定値のほうが低かったケースがあったほか、
製品に記載された「様々な病気の原因といわれる悪玉活性酸素を無害化する」「アトピーに かゆい部分に水素水をつけて下さい」などの表示も、
健康増進法や景品表示法などに抵触するおそれがあるとされた。

日本トリムが怒る理由
日本トリムの製品では定価17万7120円(税込み)の水素水生成器がテストの対象となった。テスト対象銘柄は
「相談のあった銘柄をもとに選んだわけではない」(国民生活センター)とするが、日本トリム・執行役員経営企画部長の田原周夫氏は怒りを隠さない。
「われわれは全国28カ所の事業所を通じ、毎月1回必ず消費生活センターに『何か問題はありませんか』と聞きに行っている。こ
れまで消費者からは『だまされた』というクレームは一件もない。なぜわれわれが調査の対象に選ばれなければいけないのか。
相談件数の内訳こそ、開示されるべきだ」

(続けていた)