大日本住友、他家iPS細胞医薬の製造施設完成 商業用としては世界初

大日本住友製薬は、他家iPS細胞由来の再生・細胞医薬の製造施設を同社総合研究所(大阪府吹田市)に完成させた。商業用の施設としては世界初という。1日、報道陣と投資家向けに見学会と会見を開いた。
施設は3つの区画の空調を別系統にすることで同時に3つの細胞を製造することができる。1区画当たり年間数百人分の細胞を製造する能力を持ち、同社が国内外で開発を進める再生医療製品の治験薬製造と初期の商用生産を担う。

施設では製品完成までの一連の工程を1つの区画で行う。京都大iPS細胞研究所(CiRA)で製造され凍結された状態で運ばれてきたiPS細胞を解凍。培養して細胞の数を増やす。
その上で目的とする細胞に分化誘導し、再生医療製品を完成させる。記録係の1人を含む3人が1つのチームとなり作業を行う。
加齢黄斑変性の治療に使う細胞をこの施設で製造した場合、1回の製造で最大約360人分の細胞を2カ月から2カ月半の期間をかけて製造することを想定しているという。

同社は他家iPS細胞由来の製品として、加齢黄斑変性とパーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷の4つの適応症で開発を進めている。
パーキンソン病の治療に使うドパミン神経の細胞は培養が比較的容易なため、ほぼ自動化された培養装置で製造するが、網膜色素変性の治療に使う細胞は培養工程が複雑なため手作業で行うなど、細胞によって自動化の度合いが大きく異なる。
製造施設はGMPの基準を満たしており、地上2階建て、延べ床面積2915平方メートルで総工費約36億円。
見学会では、密閉された空間で防護服にゴーグルとマスクを着用した作業員が培養の作業を模擬で行う様子をガラス越しに視察した。

同社のパイプラインのうち、パーキンソン病の開発が最も先行しており、2018年度に提携先のCiRAが医師主導臨床試験に入る。

●年間売り上げ2000億円が目標 中核事業に

他家間葉系幹細胞を使った慢性期脳梗塞の適応症で現在臨床第2相試験段階の製品も含め計5製品の開発が順調に進むことで、同社は再生医療の領域で30年には年間2000億円を売り上げる中核事業に育てたいとしている。
多田正世社長はこの日の会見で「再生細胞医療が大きな事業になっていくことを確信し、われわれはその中でしかるべきポジションを引き続き占めていきたい」と意気込みを述べた。
再生医療事業を担当する木村徹取締役は「製造設備はノウハウの塊で、つくろうと思ってもつくれるものではない。運用の中でさらにノウハウの蓄積を行っていくことで製品の差別化につながる」と述べ、世界初の製造施設として今後も優位に開発競争を進めていくとした。

https://nk.jiho.jp/article/130999