武田、ベルギーの創薬VBを買収 700億円で消化器分野を強化

武田薬品工業は5日、ベルギーの創薬スタートアップ、タイジェニックスをTOB(株式公開買い付け)で買収すると発表した。約5億2千万ユーロ(約700億円)を投じて全株式を取得する。
同社は消化器の難病の治療薬を開発中で2018年前半に欧州で販売承認を取得する見込み。武田は買収で重点領域と位置づける消化器分野の競争力を高める。

武田はタイジェニックスの普通株式のほか、新株予約権付社債(転換社債=CB)など議決権のついた有価証券を1つあたり1.78ユーロで取得する。
買収に伴う借り入れはせず、すべて手持ちの現金で対応する。既に4%程度出資しており、残りを18年4月までに買い取って完全子会社化する。

タイジェニックスはユーロネクストとナスダックに上場しており、クローン病に伴って肛門などに穴ができる疾患の新薬候補を保有している。
両社は16年、この新薬候補について米国以外の販売権を武田が取得することで合意しており、すでに欧州医薬品庁(EMA)に販売承認を申請している。近く承認を取得し欧州で発売できる見通し。

今回、買収によりこれまでの提携関係よりも踏み込むことで、米国を含むすべての地域での開発販売権を得ることができる。
敗血症や急性心筋梗塞などの新薬候補も取り入れることができ、開発ノウハウや一部の研究員なども引き受けることで研究開発力の強化につながるとみている。

武田は17年2月、米アリアド・ファーマシューティカルズを54億ドル(約6200億円)で買収した。
将来は千億円の売上高が見込めるという肺がん治療薬などを取り込むことができた一方、巨額の買収費用で有利子負債は1兆円を突破。財務の健全性が損なわれた。

このため、クリストフ・ウェバー社長は「格付けを維持するために巨額の買収には慎重だ」としていた。今回は買収額が700億円とアリアド買収時の十分の一の規模であることに加え、すべて現金で費用をまかなったことから、財務への影響は限定的だ。
ただ一方で「値ごろ感のある案件がそもそも少なくなっており、今後買収戦略は厳しくなる」(市場関係者)との指摘もある。

武田は利益率の向上が課題だ。18年3月期の見通しの売上高営業利益率(連結ベース)は11%を見込むが、連結子会社の株式売却益を含めた「その他の営業収益」1369億円を含む。
これら特殊な要因を抜きにすれば実質的な利益水準はずっと低い。競合する塩野義製薬(32%)や中外製薬(17%)にも水をあけられている。稼ぎ頭となる大型の新薬が不足することがその原因の一つだ。

このため、今回買収した企業が持つ新薬候補で収益をつなぎ時間を稼ぐ一方で研究開発を加速し、次の大型新薬の投入で収益基盤を安定化させることを目指す。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25375640V00C18A1TJ1000/