気温一桁の寒空の下
ガレージからライムグリーンの車体の埃を払いキーを挿す。

快適な始動性を兼ね備えるFIを装備しつつ悪路から舗装路、さらには渓流わたりまで、晴天でも豪雨でもどんな状況だろうとまだまだ戦える4stだ。

しかし、暫く構ってやらなかったコイツは機嫌が悪いらしい。

キーを差し暗黙と化した挨拶とも言えるニードルスイープがない…。

ふと、目覚の儀式を思い出す
ガレージに戻り、バッテリーとケーブルを持ってくる。

ははっ、こんな早朝に俺だけが顔を洗い歯を磨きライダースーツを身に纏い
朝日に挨拶を交わすなんて
自己満足もいいもんだと、
目覚まし代わりのジャンプスタートで勢いよくセルが回りと怒濤のエンジン音が響き渡る

メーターに目をやると挨拶を送ってくる。
少しほっとしつつ「おはよう」と声をかけると『冬眠するには早かったかな』と、愚痴が聞こえたような気がした。

確かにセルが回らないほど放っておくなんて、俺こそが戦いから遠退いてるようなもんだと、目を伏せた。

いや、雪道だろうと負けはしない。
眠りにつくには早すぎる、そんな言葉を心に止めてあのホライゾンを目指す。

2013/KLX250

こうするわけか。