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■カーボンナノチューブとアスベスト
◆Dr.中川のがんの時代を暮らす:/58 夢の新素材に警鐘も[毎日新聞 2012年11月19日]
 私たちの身体には、異物が侵入しても排除する能力がありますが、『アスベストの繊維のように、極めて細い物質の処理は苦手で、「細長くて丈夫」というアスベスト繊維の特徴が発がんの原因と考えられています』。
 『夢の新素材と言われる「カーボンナノチューブ」も似たような構造を持つため、一部の専門家はその危険性に警鐘を鳴らし始めています』。

■各国の政策決定・不作為が、国民の健康に大きな差をもたらした
◆Dr.中川のがんの時代を暮らす:/57 発症にタイムラグ[毎日新聞 2012年11月05日]
 『欧米では、アスベストの使用禁止が遅れた英国で、日本同様の増加傾向が続いていますが、
米国、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドなど多くの国においては、90年代をピークに減少傾向に転じています』。
 喫煙も放射線被ばくもそうですが、発がんの危険因子にさらされても、すぐにがんができるわけではありません。
たった一つのがん細胞がわずか1センチになるには20年といった長い時間がかかりますから、
『環境中に存在する発がん物質の量のピークと、それが原因となるがんの患者数のピークにはタイムラグが生じます』。
 『米国では禁煙キャンペーンが功を奏し、60年代以降に喫煙率が下がり始めましたが、肺がんの減少が確認できるようになったのは90年代になってからでした』。
 たばこと同様、中皮腫もアスベストを吸入する量と期間が長いほど発症しやすくなります。
さらに、アスベストを吸ってから、がんが見つかるまでの時間が特に長いことが特徴です。最長約60年、平均でも約40年かかります。
 アスベストの危険性が明らかになった早い時点で、政府が対策をとった国では中皮腫が減る一方、日本では今後10年は増加が予想されます。
中皮腫が完治する可能性は非常に低いわけですから、アスベストの使用を禁止するしか、中皮腫による死亡を減らすことはできません。
『各国の政策決定が、国民の健康に大きな差をもたらした典型的な事例だと思います』。