原発からの二酸化炭素(CO2)の排出は燃料になるウランの濃縮まで含めると、少ないとは言えず、発電の効率も悪いため、原発の利用は有効な地球温暖化対策とはならないとの報告書を、世界自然保護基金(WWF、本部スイス)が6日、発表した。
WWFは「地球温暖化対策の名の下に、原子力技術を発展途上国などに移転すべきではない。CO2の排出は徹底した省エネやエネルギー利用効率の向上によって実現すべきだ」と指摘している。
報告書によると、核燃料として利用可能なウランを天然ウランの中から濃縮する過程で膨大な電力を必要とするため、1キロワット時当たりのCO2の排出量は35グラムと試算され、風力の同20グラム、水力発電の同33グラムを上回る。
原子力発電の熱がほとんどそのまま捨てられているのに対し、天然ガスや木材を利用したバイオマス発電では、発電過程で出る熟を電力と同時に供給する「熟電併給(コージェネレーション)」が可能。
このため熱利用まで含めて考えると、原発からのCO2排出量は天然ガスとほとんど変わらず、バイオマス発電の7倍近くなるという。

WWFは日本のように原子力発電への依存度が高い国ほどコージェネレーションの導入率が低いといった例を挙げ、「大規模な原発の利用が国内のエネルギー利用効率向上を妨げている」と指摘している。