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広がる「逆風」押さえ込みへ
東電が編さんした『関東の電気事業と東京電力 電気事業の創始から東京電力50年への軌跡』
(「東電50年史」)は70年1月から用地買収に着手した柏崎刈羽原子力発電所の建設について、
「激しい反対運動にさらされた」と指摘しています。
74年9月には原子力船「むつ」が出力上昇試験中に放射線もれを起こし、「むつ事件」
の発端となりました。また、79年には米国スリーマイル島で当時としては最大の冷却水喪失事故が起きました。
80年代後半における最大の原子力事故は、ソ連(当時)のチェルノブイリ原発事故(86年)でした。
80年代後半から90年代にかけての時期について「東電50年史」は、「原子力開発にとって
『逆風』ともいえる事態が、この時期にはいくつか出現した」と明記。原発の安全性に対する
不信感の広がりや反対運動の盛り上がりとともに、「普及開発関係費」は膨らんでいきました。
00年代では東電を中心に原発事故隠しやデータ改ざんなどが発覚しました。
04年には新潟県中越地震で柏崎刈羽原発が停止しました。
業界をあげてメディア対策
メディア対策は、東電だけでなく、電力業界全体の課題でした。東京電力や関西電力、
中部電力など電力10社で構成する電気事業連合会で71年から82年にかけて広報部長
を務めた鈴木建氏は回顧録『電力産業の新しい挑戦』の中で赤裸々にメディア対策を語っています。
鈴木氏は原子力の広報費について、「単なるPR費ではなく、建設費の一部」と位置づけ、
原発立地対策や世論の動向に広報費を最大限生かします。
広島に原爆が投下されてから29年目となる74年8月6日、「放射能は環境にどんな影響
を与えるか」と題した10段広告が朝日新聞に立ち現れました。
74年当時、朝日新聞は石油ショックのあおりで広告が減少し、意見広告を多く掲載しよう
という議論がありました。その中で、原発推進の意見広告も受け入れるという結論が出されたといいます。
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