IHI、洋上風力発電のコスト半減 15年度にも商用化
日本経済新聞 2011/4/9 2:00 http://s.nikkei.com/hYXpdY

IHIは海上の浮体の上に風車を載せた洋上風力発電プラントの開発に乗り出す。風車を設置する浮体の形を工夫するなどして、
導入コストを既存の浮体式風力の半分程度に抑える。2012年度にも実証に着手、15年度以降の商用化を目指す。福島第1原子力発電所の事故などで将来の原発新設が難しくなるなか、
太陽光などと並ぶ大型の低炭素型電源として普及を目指す。

造船子会社のアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドを通じて開発する。これまで東京大学のグループと共同で、
実機の 50分の1の大きさの試作機を使い水槽での稼働実験を進めており、このほど実用化にメドをつけた。
洋上風力発電プラントには風車の脚部を海底に固定する「着床式」と、風車を載せた浮体を係留する「浮体式」の2種類がある。
近海の水深が深い日本では浮体式の需要が大きいとされ、国内外のプラント大手が開発を進めている。
ただ既存技術では風車を安定させるため、海底に浮体を係留する巨大なおもりを設置するのが一般的で、導入コストが着床 式の2倍以上になる難点があった。

IHIの新技術では安定度の高い構造の浮体を採用して海底へのおもりの設置を省き、導入コストを着床式と同程度に抑える。
12年度にも出力が2500キロワットの大型プラントを使った洋上での実証を始め、その3〜4年後をメドに商用化する。

商用機は風車の直径が120メートル程度、出力は5千キロワット程度になる見通し。水深が50〜200メートルの海域への設置を想定する。
沖合に設置するため、津波の被害にも遭いにくいとみられる。導入コストは1基あたり20億〜30億円 程度を目指す。20年度に年間数十基程度の販売が目標だ。

国内では陸上での大型風力発電設備の設置適地が少なく、洋上風力発電の普及が急がれている。技術が開発途上で稼働実績はほとんどなかったが、30年度には、
国内の洋上風力の導入量が原発6基分にあたる580万キロワットに達するとの試算もある。
福島第1原発の事故で、原発を中心とする国内エネルギー供給計画が大幅な見直しを迫られるなか、実用化の要請がいっそう強まりそうだ。