解放イランタンカー、シリア向け船舶が瀬取りか
By Benoit Faucon and Costas Paris
2019 年 8 月 31 日 07:53 JST

 英領ジブラルタル自治政府が今月、米国の要請を退けて解放した
イランの石油タンカーは、シリア向けに石油を運搬する小型船に
積み荷を移し替える計画で、解放条件に違反する可能性がある。
計画に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 欧州は核合意や中東の安全保障協定を巡り、
イランと米国の歩み寄りを後押ししようとしているが、
瀬取りはそうした取り組みを損なうものだ。
米当局は英領ジブラルタルが拿捕したタンカーの引き渡しを求め、
タンカーがイラン産原油をシリアに輸送中で、
欧州連合(EU)の制裁に違反していると主張していた。
だが、タンカーに積まれた200万バレルの原油をシリアに運ぶことはないと
イランが言明したことを受け、このタンカーは8月18日に解放された。

 米当局者によると、国務省はタンカーのシリア向け計画とみられる動きの阻止を
目指している。国務省はこれまで、地中海にいるイランのタンカー2隻に積み荷が
移される可能性があるとみて追跡している。このためエジプトに対し、イランへ戻る
解放されたタンカーについてスエズ運河を通航させないよう警告しているという。

 イランのタンカー「エイドリアン・ダリア1」(旧「グレース1」)は
2カ月余りにわたってジブラルタル当局に差し押さえられていた。