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 習氏を特徴付ける考え方は、「中国の夢」または「中華民族の偉大なる復興」だ。
「復興」は帝国システムの復活を思い起こさせるものであり、
天下を想起させるものは2008年の北京夏季五輪のスローガンにあった。
習氏は中国共産党中央政治局常務委員会のメンバーとしてこの五輪を取り仕切った。
「1つの世界、1つの夢」というスローガンは、
少なくとも天下の実践方法について研究するために党に雇われた学者たちにとっては、
中国の夢と世界にとっての夢を同一視するものだった。

 習氏は五輪以降、天下に関して、さらに直接的な言葉を使っている。
同氏は2017年の新年のあいさつで、「世界は1つであり、天の下にある全てのものは
1つの家族だとの見方を中国は常に支持している」と述べていた。

 習氏は自身の革命思想について理解を徹底させるため、王毅外相が
中国共産党中央党校の機関紙「学習時報」に掲載した文書の中でこれを説明させた。
その中で王氏は「習近平主席の外交についての思想は革新的なもので、
過去300年にわたる国際関係に関する伝統的な欧米の理論を超越したものだった」と
強調した。共産党における独特の言葉遣いにおいて、「思想」という用語は
イデオロギーの重要な部分を占めるもので、その例として「毛沢東思想」がある。

 王氏の指摘がウェストファリア条約(1648年)を意味していたのはほぼ確実だ。
同条約は、国家が主権を持つ存在だと認識することで、現在の国際秩序を確立した
ものだ。その秩序を「超越した」と指摘した王氏は、習氏が望んでいる主権国家のない
世界について示唆していた。別の言葉で言えば、中国が統治する統一世界のことだ。