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 中国と米国が覇権争いを繰り広げていると語る「専門家」が世界中にあふれている。
それは論理的見地から見れば事実である。しかし、米中の覇権争いという言葉は、
米国が、中国への嫉妬心から国際システムの頂点の地位を譲り渡すことに抵抗している
という、誤った印象を与えてしまう。これは中国政府の描く状況説明だ。
中国の指導者らは、米国が避けがたい衰退の過程にあると示唆し、
中国の正当な台頭を妨げようとしていると非難することで、米国の評判を傷付けている。

 実際には、米国は国際秩序内における米国の立場以上のものを守ろうとしている。
米国は国際秩序そのものを守ろうとしているのだ。それは習氏が王朝時代の中国の概念を
推進することによって打ち壊そうとしているものだ。

 中国歴代王朝の朝貢制度を下支えしていた考え方は、遠方の国も近隣諸国も
中国の支配を認める義務があるというものだった。中国の皇帝たちは、
自分たちに「天下(天の下の全てのもの)」に関する「天命」があると主張した。

 中国は20世紀前半に天下の考え方を否定し、後半にはそれを強く打ち出さなかった。
しかし、21世紀になって復活を果たしつつある。
「The China Order: Centralia, World Empire and the Nature of Chinese Power
(仮訳:中華秩序:中原、世界帝国と中国パワーの本質)」の著者である王飛凌氏は
先週、筆者に対し「天下は中国で長い間実践されてきた政治的伝統で、
現在の中国で復活し、活気を取り戻しつつある理想だ」と述べ、
「天下、つまり中華秩序という中国の夢は、
1つの階層的な世界帝国システムを想定している」と話した。