「慰安婦」「元徴用工」韓国・文政権ジレンマ
上田 勇実  2018/12/12(水)

 日韓関係が急速に冷え込んでいる。
元徴用工だったと主張する朝鮮半島出身者が起こした賠償請求訴訟で
韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償命令を言い渡す判決を下し、
韓国政府がいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる一昨年末の日韓合意に基づく支援財団の
解散を発表したことが決定的な原因だ。日本には韓国に対する不信感が広がっているが、
なぜ文在寅政権は反日路線に舵を切ったのだろうか。(編集委員・上田勇実)

日本と国内支持層の板挟み
特使派遣を日本に要請も

 先月、韓国女性家族省は元慰安婦やその遺族への癒やし金支給を行ってきた
「和解・癒やし財団」の解散を発表したが、それと関連し韓国外務省は
「日韓合意の破棄や再交渉は求めない」という従来の立場を重ねて強調した。
財団解散を事実上の日韓合意破棄と見なす日本側への配慮が明らかににじんでいた。

 女性家族省は財団解散の法的根拠として「目的以外の事業を行ったか設立許可の
条件に反した」場合を記した民法第38条を挙げているが、財団の成果については
「以前(朴槿恵前政権時)あったことを否定するわけではなく、事後的な現状では
成果がない」(同省権益増進局関係者)と説明。これも日本が拠出した10億円で
実施された癒やし金支給など「以前」の財団活動の意義を貶(おとし)めない
便宜的解釈だろうか。

 文大統領はアルゼンチンで開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席後、
帰国の途で記者団に「歴史問題によって韓日の協力関係が損なわれてはならない。
未来志向的な協力をすべきだ」と述べた。

 元徴用工訴訟をめぐる大法院審理を朴槿恵前政権が意図的に遅らせたという疑惑を
問題視したことが今回の賠償命令につながるなど、自ら「反日判決」の流れをつくって
おきながら「未来志向」に言及した文大統領の発言は一見すると矛盾している。
ただ、そこには文大統領なりのジレンマがあるようだ。