入隊した北朝鮮軍、渡されたのは竹や石 朝鮮戦争68年
大部俊哉 佐々木亮
2018年6月25日18時50分

 同じ民族同士で戦火を交えた朝鮮戦争が始まってから25日で68年。
いまも「休戦」の状態が続いている。12日には、当事者である米国と北朝鮮が
初めて首脳会談を開いた。「終戦」を望む声は高まっている。

 大阪市生野区で接骨院を営む朴信也(パクシニャ)さん(44)は、
朝鮮戦争で北朝鮮軍に徴兵され、米軍の捕虜となった父正雄(ジョンウン)さんを
思いながら、米朝首脳会談の中継を見ていた。
「対立の歴史を終え、南北双方が幸せになる関係に」と願いながら。

 信也さんによると、正雄さんは三重県生まれの在日2世。
ソウルの大学に通っていた1950年6月25日に戦争が勃発。
攻め入ってきた北朝鮮軍に入隊を求められ、従った。
「武器ではなく、竹や石を持たされていた」という。

 同年9月に米軍が仁川から上陸し、戦局は逆転。
北朝鮮軍は散り散りになり、正雄さんは山中にいたところを米軍に拘束され、
約2年間収容所に。解放後、命からがら日本に帰った。

 正雄さんは軍や収容所での生活を一切語らず、5年前、79歳で亡くなった。
終戦や南北統一への思いも聞けずじまいだったが、
スポーツを見るときはいつも、南北双方を応援していた。

 いまだ休戦状態の朝鮮戦争が、終戦につながることを願う。
「アボジ(父)は『もう戦争だけはしてほしくない』と強く願っていたと思う。
今回の南北、朝米の首脳会談はまだ第一歩。
戦争の当事国が努力を続けて、一日も早く平和を実現してほしい」(大部俊哉)