首相、積極財政へ布石
インフラ整備や消費喚起 景気失速回避に着手

安倍晋三首相は20日の経済財政諮問会議で、2019年10月の消費増税や20年の東京五輪・パラリンピック後の景気後退をにらんだ対策づくりを関係閣僚に指示した。
日銀の黒田東彦総裁の再任をにらみ、積極的な財政政策にカジを切る布石とする。
増税などによるアベノミクスの失速を未然に防ぐ狙いだが、19年に集中する選挙対策との側面も垣間見える。(1面参照)

首相官邸で開かれた経済財政諮問会議(20日)
首相は諮問会議で「民間議員から消費増税や東京五輪を契機とする需要の変動を乗り越え、安定的な成長軌道に乗せていかなければならないという意見を頂いた」と指摘した。

特に消費増税についてはわざわざ「14年の消費税率引き上げ時の経験に鑑みる」と言及。
増税後に個人消費が急減した経験にあえて触れることで、十分な対策の必要性を訴えた。

歳出に関わる議論を国会の予算審議中に始めるのは異例だ。
6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込み、金融緩和の継続と併せ、経済政策の両輪としたい考えだ。

諮問会議の民間議員は消費増税後の対策について、家電製品などの耐久消費財や住宅を対象に「企業の供給力や競争力の強化、社会課題の解決等を見据えた需要安定化策を検討すべきだ」とした。
政府はリーマン・ショック後に環境性能が良いエコカー向けの減税策や補助金を導入した。こうした先進分野に限った消費拡大策が念頭にある。

東京五輪後の対策はインフラ整備が中心だ。民間議員は「東京五輪後の成長の基盤となる投資プロジェクトを実施すべきだ」と提言。
外国人観光客がさらに増えるよう観光関連のハードの整備も求めた。

首相は16日、黒田総裁を再任する国会同意人事案を提示した。
副総裁にはリフレ派とされる早大の若田部昌澄教授を充てる。
衆参で与党が過半数を握るなか、人事案の可決は確実だ。この時期にアベノミクスの柱となってきた金融・財政の骨格を固める。

安倍政権は日銀の異次元金融緩和や積極的な財政出動をテコに、景気を下支えしてきた。
12年12月に始まった景気回復は6年目に突入し、戦後2番目の長さとなった。

ただ19年10月の消費増税と20年の東京五輪後の景気は見通しにくい。
日本経済新聞社が民間シンクタンク16社の予測をまとめたところ、消費増税直後の19年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率換算で2.6%減と大きく落ち込む。