>>302
(続き)

 2004年、海上自衛隊の輸送艦に同乗して中東へ取材に向かった。
途中、ペルシャ湾で正体不明のボートが接近してきた。警笛を鳴らしても止まらない。
爆弾を積んだボートが米艦に突っ込んで死傷者が出たテロが頭をよぎった。
結局何事もなく通り過ぎたが、艦内には緊張が走った。

 日本人は、テロや他国からの攻撃に対する危機感が薄い。
先月、北朝鮮のミサイル発射で一部の地下鉄が運転を見合わせた。
「過剰反応だ」という声もあったが、止める判断は正しかったと思う。
災害時の避難指示なら「空振り」でも文句が出ないのに、ミサイルやテロだとやり過ぎと言われる。
国民に「どうせ起きるわけない」という思い込みがある。

 これからも安全な日本社会を守っていきたい。
共謀罪でテロを全て防げるとは思えないが、計画の実行前に取り締まれるようになる意味は大きい。
これまで過激派が起こした事件の中には、
準備段階で検挙すれば防げたかもしれないと思えるケースもある。

 もちろん権力は監視しなければならない。わしも時に大臣や議員を追っかけ回して取材し、
厳しく批判している。警察だって組織防衛に走ることがあり、妄信するつもりもない。
だが、治安維持法を引き合いにした「警察が暴走する」といった批判には、
「おいおい今は戦前とは違うだろう」と言いたい。

 カメラマンとしての経験から、表現や言論の自由の尊さは十分理解している。
それでも、共謀罪を危険視するだけの反対論には同意できない。
テロ防止のために必要な法案は早く成立させるべきだ。(聞き手・岩崎生之助)
     ◇
 〈みやじま・しげき〉 日大芸術学部客員教授。自衛隊の海外派遣を取材。
主な作品に「国防男子」「サマワのいちばん暑い日」など。

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