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リベラルはつらいよ

しかし、ここで延々と「リムジン・リベラル」な人物の例を挙げ続けるつもりはない。
ハイブリッド車をこよなく愛する環境活動家のレオナルド・ディカプリオが、
世界各地のリゾートで休暇を楽しむジェットセッターでもあるからといって、
「お前もリムジン・リベラルだ!!」と批判して何になるのだろう?
矛盾を理由に、彼が自らの信念に従って行動すること自体、意味がないと
切り捨ててしまっていいのか?

最初から環境保護なんぞには興味ありません、と今の大統領のように開き直っていれば、
もちろんそれに猛反発する人はいるわけだが、
少なくとも「欺瞞に満ちたリムジン・リベラル」などと揶揄されることはないのに……。
リベラルはつらいよ。

とはいえ、そんな泣き言が許されるのは善良な金持ちやセレブだけで、政治家は違う。
ニューディール政策で「little man」に寄り添い、絶大な人気と尊敬を集めた
故フランクリン・ルーズベルト大統領の政党は、もはや弱く小さき者の政党ではない。
その名も「Listen, Liberal: Or, What Ever Happened to the Party of the People?」
という本を執筆した政治アナリストのトーマス・フランク氏はその著書の中で、
民主党は今やワーキングクラスや貧困層を代表する「人びとの政党」ではなく、
特定の「プロフェッショナルクラス」の政党、つまり弁護士や医師、大学教授、科学者、
プログラマーなどのエリート層を代表する党になってしまったと警告している。
ちょうど共和党予備選でトランプ氏の優勢がますます明らかになっていた
2016年3月のことだ。そして今年、アメリカには共和党のトランプ政権が誕生した。

金持ちだろうが既得権益層だろうが、弱く小さきものに寄り添おうとすることは
断じて非難されるべきことではない。善良な気持ちを揶揄されたら、
トホホと心が折れてしまうこともあるだろう。「リベラルはつらいよ」……。
確かにけっこうきついだろうと思う。しかし政治家は心を折っている場合ではない。
自分たちを「リムジン・リベラル」と呼ぶ人々の声に、その理由に耳を傾けなくては。
近頃は日本の民進党にもこの言葉が時として使われることがあると聞いた。
日本のワーキングクラスや貧困層の声は、果たして誰に聞き届けられているのだろうか。

https://www.businessinsider.jp/post-33550