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「リムジン・リベラル」のエピソードが生まれやすいニューヨーク

話がそれてしまったが、政治の分野でこの手の言葉の標的になるのは、
アメリカの場合だと「the Party of the People」「the Party of the Working Class」
の民主党ということになる。ワーキングクラスや貧困層を代表すると主張しながら、
全くその現実が分かっていないと揶揄・批判されるわけだ。
「リムジン・リベラル」という言葉が最初に使われたのは、1969年のニューヨーク市長選
だったという。現職市長に挑戦した民主党候補が、現職市長の貧困対策・マイノリティ救済
プログラムに関して、「シルクストッキング地区」マインドで陣頭指揮するから失敗した
のだと批判した。良家出身で高級住宅街のアッパーイーストサイドに住みながら、
真の貧困対策はできないという主張だ。

ちなみに、基本的に民主党が優勢なリベラルな土壌で、桁違いの金持ちも多いニューヨークは、
そんな「リムジン・リベラル」のエピソードが生まれやすい土地柄と言えるかもしれない。
瀟洒なブラウンストーンが立ち並ぶブルックリンのある高級住宅街で、
先日、バーニー・サンダース氏の新しいポスターが扉に貼ってあるのを見た。
下の方に「2020」と書かれてある。先の大統領選からサンダース氏かヒラリー氏が
デフォルトで、トランプ氏のポスターなんぞ貼り出そうものなら永久村八分処分
間違いなしのリベラルな地域だから、もちろん不思議なことではない。
「公立大学の授業料無償化」とか「最低賃金の引き上げ」とか、本気で支持しているのだと思う。
が、最低賃金の仕事で住める地域ではないし、子どもをタダで公立大学に行かせたい、
行かせるしかない! という家庭ではないだろうことも想像に難くないので、
「リムジン・リベラル」という言葉がつい頭をよぎってしまう瞬間ではある。

ちなみにビル・デブラシオ現市長も自宅をこの地域に構えている。
市長官邸に移ってからは、ひと月5000ドルほどで人に貸しているそうだ。
このことが、低賃料住宅プラン(Affordable Housing Plan)を政策の中心の1つに据える
市長の政治的信条を疑う理由にはならないが、
もし失敗すれば「やっぱり、分かっちゃいなかったんだね」と言われる原因にはなろう。