リムジン・リベラル ―― 貧しき者の味方のつもりが、なりきれない金持ちたち?
金子まい

オバマよ、お前もか

今月4日、医療保険制度改革法(オバマケア)の改廃法案が僅差で下院を通過したのは
記憶に新しい。その3日後、故ケネディ元大統領にちなんだ「勇気ある人物賞」の
受賞式で、オバマ前大統領が受賞スピーチを行い、(議席を失うことを恐れず)
勇気を持って正しいことをするよう、議員たちに呼びかけた。それまで無保険状態だった
2000万人を新たに医療保険に加入させた「立役者」なのだから、それも当然だろう。

そんなオバマ氏だが先月末、ウォール街の会合での講演を40万ドル
(日本円で約4500万円)で引き受けたと各メディアに報じられた。
米大統領職を退いた後に講演代や回想録の執筆で荒稼ぎするなどというのは、
何も彼に始まったことではない。前例にならって大統領時代の記録を収めた図書館や
記念館の1つも建てなければならないし、NPOか慈善団体だって創設しなければならない
かもしれない。引退後の大統領は何かと入り用なのだ。

しかし「オバマよ、お前もか」と、思わず脱力してしまったアメリカ人も少なくなかった
はず。ヒラリー氏は先の大統領選期間中、同じ理由でウォール街と闘う姿勢を最後まで
有権者に信じてもらえなかった。今でも「リムジン・リベラル」の代表格のように扱われ
続けている。今回のことだけで、オバマ氏までその不名誉リストの筆頭に名を連ねて
しまったとは必ずしも言えないが、やりきれない失望感が人々の間に広がったのは
確かだし、これからも繰り返し似たような話を聞かされることになるのも確かだろう。