>>347-348
2017年10月20日号
佐々木実の経済私考 
アベノミクスの「GDPかさ上げ疑惑」
ポピュリズムと経済政策の危うい関係
ttp://www.kinyobi.co.jp/tokushu/002417.php
「2016年度のGDP(国内総生産)は史上最高ですよ」
 テレビニュースの党首インタビューで、安倍晋三首相が「史上最高のGDP」を誇示するのを見て、
「基準変更」への疑問が再び頭をもたげた。
 今年2月にこのコラムで触れたが、安倍政権は昨年12月にGDPの算出基準を大幅に変更している。
その時点で最新のデータだった2015年度は、従来の基準で501兆円のGDPが、新たな基準のもとで
532兆円。基準変更のみで30兆円以上増えていた。
   (中略)
 明石順平氏は『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)で「GDPかさ上げ疑惑」という章を
設け、昨年12月のGDP算出基準の変更を検証している。
   (中略)
 明石氏によると、昨年12月の基準変更によって、マクロ経済統計から読み取れる「アベノミクス失敗」
を象徴する五つの現象がすべて消えた。「戦後初めて2年度連続で実質民間最終消費支出が下がった
などの現象である。2016年度のGDPが史上最高を記録したのも、旧基準なら史上最高の1997年度が
相対的に低く修正された結果だった。「歴史の書き換えに等しい改訂がされた疑いがある」と明石氏は
疑問を呈している。
 選挙戦で安倍首相は、過去に遡って「改訂」されたマクロ経済統計を存分に活用している。彼は
「経済運営の成功」というイメージづくりが、自らに強い求心力を与えてくれることを身をもって知って
いる。投資家に大歓迎された「異次元金融緩和」は結局失敗に終わっているが、安倍首相には今なお
「成功体験」と映っているのではなかろうか。