「歌のピッチもちっとも合わないぃ」
トレーナーはここで脱力する表現をしろと言う。…認めたくは無いが、私、雨谷燕は脱力の表現が随分と苦手だったらしい。
「んっ…はぁぁ〜」
普段肩肘張って力んでいると言われる分、私は極端に思えるほど全身から力を抜いた。
肩から…
腕から…
腹から…
腰から…
「良いぞ雨谷!その感じだ!」
よし、このまま下半身も…
トレーナーに褒められ、柄にもなくテンションが上がっていた私はそのまま力を一気に抜く。
しかし、一瞬の気の緩みが余計な力まで抜いてしまった。

プブッ!ブゥゥウウ!プチッ………スゥゥゥ…

「……」
「……」

この雨谷燕が、アイドル人生を賭けて"括約筋"を鍛える事を誓った日であった。