「笑顔ってなんだろう」
弦巻こころは悩んでいた。道端に咲いた小さな花に目線を合わせて、小さく呟いて問いかける。
「世界を笑顔にするために、最善の方法はなんだろう」
花は応えないが、その呟きを聞いていたものがいた。
「まーた面倒なことを言い始めましたよこの娘は」
「あはは……こころちゃんはハロハピの活動だけじゃ不満かな?」
奥沢美咲と松原花音である。
「不満ではないわ。でも、他に手段があるかもしれない。そうでしょう? 例えば、そう……」
そこに通りがかる人影。お腹を空かせたチョココロネの化身、牛込りみだ。
「お腹が空いて力がでないよぅ……」
「お困りのようねりみ! 来なさい黒服!」
瞬時に現れる黒服。ビクッとなる花音。
「コロネは既に用意してあります」
「わあ、チョココロネが山のよう! もらっていいの?」
「もちろんよ! あなたが笑顔になってくれれば私は嬉しいわ!」
牛込りみはおいひいおいひい言いながら去っていった。
「どうかしら? 人を笑顔にするのに手段なんて関係ないのよ! 私はそれを悟ったんだわ!」
美咲が止める間も無くこころは飛び跳ねて学校へ向かった。そこには笑顔になることのできない哀れな少女たちがいた。
「エゴサ……エゴ、サーチ……ぐへへ……」
「黒服!」
「既に」
「どうしたのこころちゃ━━、Twitterの検索ランキング1位……!?」ジョババババ
「ロゼリアの機材は経費で落ちないのよ!」
「黒服!」
「既に」
「こんな高級な機材をタダで貰えるなんて」ジョババババ
天才的な手腕で周囲を笑顔にしてまわるこころ。自然とこころの周りには笑顔になりたい人たちが群がるようになったが、その人垣のはずれに一人、こころには目もくれず木刀を振る少女の姿があった。
「あなたは笑顔になりたくないのかしら?」
「ブシドーとは」
少女━━若宮イヴは素振りを止めて、こころの目を覗き込むように言った。
「ブシドーとは、魂です。人に授かるものではない」
笑顔にしたいこころが、たった一人笑顔にできない少女。果たしてこころは本物の幸せを見つけることができるのか。乞うご期待!