キャンプ近くを流れる川のほとりで水を飲んでいた鹿が、ふとこちらに気付き、顔を上げた
見慣れない人間を見てか、少し、小首をかしげている
まつりは、しばらく、鹿と見つめ合っているように見えた
そして、構えていた狩猟銃の引き金を引いた
静香な昼下がりの森に、銃声が響いた
鹿は即死し、まつりはすぐに鹿を解体した
捌いた腹の中から、苔や草がどろりとこぼれた
この鹿が、この森で生きていた証だ
まつりはそう言いながら、この森の生態について話し
今日のシチューは全部、この森の恵美なのですと言って笑った。