まず一次予防として、身体拘束を必要とする事象を発生させないことが理想である。この段階では、
前述のようにせん妄と認知症のBPSDを予防し、ルートやドレーンの必要性(早期抜去)を検討する。

 身体拘束を要する場面が出現した場合は、二次予防として代替性の検討(せん妄の重症化予防)を行う。
身体的な苦痛(疼痛や便秘)の軽減、治療の優先順位、代替手段の可能性を検討する。

例えば、「患者が興奮しているのは痛みの訴えかもしれない」と気付けば、アセトアミノフェンの投与が考慮される。
具体的な工夫のリストを作成し、現場の知恵を共有することが有用であるという。

 重要なのは、「身体拘束を何気なく続ける状態」を減らすことである。

三次予防では身体拘束解除カンファレンスを開催するが、既定路線は身体拘束の「解除」であり、継続には理由の提示を必須とする。
提示できない場合は積極的に一時解除を行い、解除した姿勢を非難しない組織文化が重要であるという。

 同氏は「身体拘束最小化への取り組みの二本柱はせん妄予防と転倒対策。
これらを実施することで身体拘束の実施率は下げられるし、現場の負担も減らせる」とまとめた。