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「第9」モノラル録音
http://classic.music.coocan.jp/sym/beethoven/beethoven9-m.htm

ウィーン・フィル,ウィーン国立歌劇場合唱団、ザルツブルク大聖堂聖歌隊員

イルムガルト・ゼーフリート、ジークリンデ・ヴァーグナー、アントン・デルモータ、ヨゼフ・グラインドル

ORFEO。1951年8月31日、ザルツブルク音楽祭閉幕演奏会ライヴ録音。
初めは単品で発売されたC533 001B(写真左)。のち2004年にザルツブルク録音集8枚組C409 048L(写真右)に買い換え、単品は譲渡した。
バイロイトの名演の1ヶ月後の演奏ということになる。バイロイトで共演したソリスト4人はその後もバイロイトにとどまり「マイスタージンガー」「指環」に出演しているため、このザルツブルクは全く違う4人である。
この4人はまたいずれも、この年のフルトヴェングラーとの「魔笛」に出演している。最後のソリスト四重唱はバイロイト盤よりも端正で好感がもてる。
フルトヴェングラーの指揮は、バイロイト盤の神かがり的演奏をもう一度咀嚼しなおしているわけであるが、そのため最後の猛スピードの部分などはやや二番煎じ的に感じられる。
行進曲部分はデルモータのソロは健闘しているのに男声合唱の合いの手がほとんど聞こえない。
この部分シンバルにマイクが近すぎて録音バランスが悪いのが原因と思われる...と書いていたが、
TAHRAの戦時中録音(FURT 1034/9)に付けられた録音技師フリードリヒ・シュナップのインタビュー(→「クラシックプレス」に5回にわたって翻訳が掲載)によれば、この録音もシュナップが呼ばれて担当したようだ。

それによれば、

フルトヴェングラーがあまりにもティンパニを大きく叩かせるので..私はバルコニーに出て行きフルトヴェングラーにそう伝えると、..

「でも、とてもいい音じゃないですか。」と

私は「では、そのままで結構です」と言ったのです。..ほんのわずかでも入力オーバーになると、歪みが生じるだけでなく、放送そのものもダメにしかねないのです。..
唯一の手立てとして、スコアをゆっくりと追っていき、やや長めのディミヌエンドやクレッシェンドを縮めるのです。」

(dimの時に次第に入力を強めていき、crescの時に入力を弱めていく)

フルトヴェングラーはある時こう言いました。

「あなたの録音のいいところは、あなたが何もしていないからだ。」

この言葉は逆説的ですが、私のやり方が正しく、そしてフルトヴェングラーの意図をわずかに縮めたとはいえ、再現しえたことを示すものです。

シュナップは、このインタビューで「オケの中のマイクを撤去し、
ホールの適切な位置にマイクを1本だけつるす」つまりワンポイント録音によって、
個々のセクションの正しいバランスを得ようとする過程でのミスを排除できる、とも言っている。

だから彼は確かに楽器間のバランスについては、いじっていないのである。