でもそうした疑問や違和感が、この発掘ライヴで見事に氷解。バンドといいながらメンバーの出入りが多く、半ば当時のスティーリー・ダンみたいな活動形態だったけど、バンド・ラインナップも確認せずに聴き始めたら、いきなりダブル・ハープの絡みで一気に意識を持って行かれた。そうか、この時期は名手ノートン・バッファロー(09年没)がいたのだな。ベースはオリジナル・メンバーの出戻りロニー・ターナー。ドラムスはもちろんミラーの片腕ゲイリー・マラバー。そして何よりこの時期はギタリストが2人いて、ミラー含めてトリプル・ギター編成だったのだ。このラインナップは、『FLY LIKE AN EAGLE』発表後のツアーからの、ホンの短い間だけ。つまり、スティーヴ・ミラー・バンド全盛期の中でも、一番のハイライト・ショウの記録ということになる。

それだけにノリノリのステージが展開されて…。スタジオ盤では届きにくかったミラー自身も魅力もダイレクトに伝わって、ああこのバンドは早すぎたヒューイ・ルイス&ザ・ニュースなのか、と思ったり。つまり中庸の魅力をシスコ流儀の粋で表現する感覚。ハープ奏者を置くあたりも、コダワリの強さを感じる。レパートリーも、クリームだの、フリーだの、ジェイムズ・ギャングだの、レーナード・スキナードだのと元ネタが分かるような耳馴染みのあるリフの楽曲が多いんだが、それをうまく咀嚼しているから、目くじらを立てるより笑って楽しんじゃおう、となる。そこが如何にもアメリカ的。フリートウッド・マックやピーター・フランプトン同様、70年代後半の(米国でいう)ソフト・ロック隆盛で波に乗った感はあるが、彼らもまたライヴ・パフォーマンスで人気を高めた連中だったのかも。

とにかく、コレを聴かずして、スティーヴ・ミラー・バンドに難癖つけるべからず、です。反省