“出場機会”を求めてJリーグ移籍を決める韓国の実力者たち
先日、一部メディアでFC東京のFW阿部拓馬がKリーグ・クラシック(1部)の蔚山現代に完全移籍すると報じられた。蔚山では過去に家長昭博(現川崎フロンターレ)、増田誓志(現アル・シャールジャ/UAE)がプレー。移籍が実現すれば、同クラブでプレーする3人目の日本人選手となる。
一方、韓国の移籍市場は6月29日から7月28日までの約1カ月にわたって開いているため、ここ数週間でKリーグからJリーグへ移籍を決めた選手が相次いでいる。
かつてセレッソ大阪などに在籍したMFキム・ボギョンは全北現代から柏レイソルへ、FWファン・ウィジョは城南FCからガンバ大阪、DFチョン・スンヒョンは蔚山現代からサガン鳥栖に移籍した。さらに、済州ユナイテッドでエースナンバーの「10」を背負っていたブラジル人FWマルセロ・トスカーノが大宮アルディージャに完全移籍している。
こうした流れについて、韓国の総合ニュースサイト「ノーカットニュース」は、「韓国人選手が今、Jリーグに目を向ける理由は“出場機会”」と伝えた。これはいったいどういう意味なのか。
同サイトは「中国リーグは莫大な資金力で、アジアで実力のある韓国人DFを呼んだが、今シーズン前に外国人枠『4』とアジア枠『1』を事実上廃止し、外国人選手3人だけがプレーできるように規定を変更したから」と理由を説明している。こうなると中国では、欧州から連れてきた実力のある選手が優先的に出場できるようになり、韓国人選手の出場機会は自ずと減っていく。
中東でも18-19シーズンからアジア枠減少か
逆にJリーグは、今季から外国籍選手の登録枠を5名に拡大。ベンチ入りを含めた出場可能な選手の人数は従来と変わらず、外国籍選手枠3人+アジア枠または提携国枠(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、イラン、マレーシア、カタール)の1名だ。そうなれば、出場機会が得られるJリーグへと、人材が流れるのは自然なことなのかもしれない。
ちなみに広州富力(中国)の韓国代表DFチャン・ヒョンスが先月下旬、2012年から13年ンまで在籍したFC東京と移籍交渉をしているというニュースが飛び込んできたが、韓国メディアによれば完全移籍での復帰に向けて交渉は大詰めを迎えているという。
チャン・ヒョンスは2016年リオデジャネイロ五輪にオーバーエージ枠で出場し、主将として8強入りに貢献。2018年ロシア・ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選にも出場中だ。そんな彼でさえも今季、中国リーグのアジア枠減で出場機会に恵まれず、「誰かが怪我でもしない限り、試合に出られない難しい状態だ。移籍したい気持ちはある」と話していたほどだ。
また、スポーツ紙「イルガンスポーツ」は、韓国人選手のJリーグ進出が相次ぐ理由について、「近年、韓国サッカーの力が急激に落ち、中国と中東リーグがアジア枠を縮小する動きを見せたことで、Kリーガーの国内Uターン、Jリーグへの移籍が加速している」と伝えた。
同紙は中国リーグのアジア枠減の影響についても指摘しつつ、中東リーグでプレーしている韓国人選手にもいずれ同じような現象が起こると予想しつつ、「2018-19シーズンから中国と同様の措置を講じるとの話もあり、韓国人選手よりも実力のある外国人選手を呼び寄せる方向に向かうだろう」と伝えている。
ユン・ジョンファン監督が鳴らす警鐘
こうした動きに真っ先に反応したのが、C大阪のユン・ジョンファン監督だ。スポーツ紙「スポーツソウル」の取材に対して指揮官は、「中国のアジア枠減の影響もあるだろうが、選手だけでなく、エージェントもJリーグへたくさん呼び寄せているようだが、簡単に考えていては危険だ」と警鐘を鳴らした。
また、自身がJリーグでプレーした経験を踏まえ、「外国人選手としてプレーするということは、どのリーグでも難しいことなので、慎重になる必要がある。ただ、Jリーグへ来た選手たちが結果を残せば、後輩たちに道を開くことになるので意味がある。もっとも、重要なのは試合に出場できるチームに行くことだ」と力説している。