→Ad5-nCoVワクチンは、接種後14日以内にある程度の効果を発揮し、28日以内でほとんどの人から免疫応答が確認された
→今回の試験はサンプルサイズが少なく効果と安全性が確立されたとは言えないため、さらなる長期的な試験が必要
現在、世界中で100種類以上もの開発が進んでいる新型コロナウイルスワクチン。先日も米国のワクチン臨床試験で抗体が確認されたことが報告されました。
その中の1つである「アデノウイルス5型ベクターCOVID-19 (Ad5-nCoV)」は人間に対する初めての臨床試験を行っており、今回、中国・北京生物工学研究所のウェイ・チェン教授らによって成功を収めたと報告されました。
試験では、Ad5-nCoVワクチンによって新型コロナウイルスの免疫応答が確認されましたが、感染からの保護効果を実証するにはさらなる試験が必要でしょう。
■Ad5-nCoVワクチンとは
Ad5-nCoVワクチンは、弱体化させた一般的な風邪ウイルス(アデノウイルス)を用いています。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をつくる遺伝子を細胞に導入することで、細胞はスパイクへの免疫を作りだし、スパイク有りのウイルス本体を弾くことができるのです。
さて、体の免疫反応には、体液中の抗体が働く「液性免疫」と、細胞が直接働く「細胞性免疫」があり、この2つが協力して働くことにより効率よく抗原を排除できます。
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液性免疫では「抗体」が中心になって作用しますが、細胞性免疫は「T細胞」が中心となって作用します。
そのため、新ワクチンが抗体とT細胞の両方の反応を引き出せるなら、非常に理想的だと言えるでしょう。
■試験内容
Ad5-nCoVワクチン試験のため選ばれたのは、感染していない18歳から60歳までの108人の健康な成人。
彼らを投与量(低・中・高)によってグループ分けし、免疫応答(抗体・T細胞)と安全性を評価しました。
■安全性
試験の結果、どのグループもワクチン接種の28日以内には深刻な有害作用は報告されませんでした。
ほとんどの有害作用は軽度または中程度であり、低用量および中用量の83%、高用量の75%がワクチン接種後7日以内に少なくとも1つの副作用を引き起こしました。
最も一般的な副作用は、ワクチン接種者の半数以上で報告された「注射部位の軽度の痛み」「発熱」「頭痛」「筋肉痛」です。
また、高用量を投与された参加者の1人は、激しい発熱、疲労、息切れ、筋肉痛などの重篤な症状を報告しましたが、これらの副作用は48時間以内に収まりました。
■免疫応答
ワクチン接種の2週間以内に、すべてのグループに結合抗体(ウイルスと結合できるが、必ずしも攻撃するわけではない)が確認され、ある程度の免疫応答が引き起こされました。
そして、一部の参加者は新型コロナウイルスに対する検出可能な中和抗体(ウイルスと結合し、ウイルスの作用を無くす)も有していたのです。
さらに28日後には、参加者ほとんどの結合抗体が4倍に増加しており、低・中用量のグループの半分と高用量のグループの4分の3が中和抗体を保有。
加えて、Ad5-nCoVワクチンは、大多数に急速なT細胞反応を引き起こしました。
特に中・高用量を与えられた人からは高い反応があり、レベルはワクチン接種後14日でピークになっています。
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これらの結果により、ワクチン投与28日後には、大多数がT細胞応答を示すか、検出可能な中和抗体を持っていた(低用量78%、中用量92%、高用量100%)という結果が得られました。
この研究は5月22日、「The Lancet」誌に掲載されました。
Safety, tolerability, and immunogenicity of a recombinant adenovirus type-5 vectored COVID-19 vaccine: a dose-escalation, open-label, non-randomised, first-in-human trial
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31208-3/fulltext
続きはソースで
https://nazology.net/archives/60727