威容誇る大規模古墳=古代政権と密接に関係−世界遺産
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2019/7/7
JIJI.COM

写真:仁徳天皇陵古墳(大山古墳、奥)や履中天皇陵古墳(手前)などがある百舌鳥古墳群=2018年1月、大阪府内
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 全国に約20万基あるとされる古墳の中で、「百舌鳥・古市古墳群」は4世紀後半から5世紀後半の古墳時代の最盛期に築造された。前方後円墳の巨大化が図られた時期に当たり、国内最大の仁徳天皇陵古墳(大山古墳)など大規模古墳が威容を誇っている。
威容誇る大規模古墳=古代政権と密接に関係−世界遺産

 仁徳天皇陵はクフ王のピラミッド、秦の始皇帝陵と共に「世界三大墳墓」に数えられる。墳丘の長さは486メートルで、三重の濠(ごう)を巡らす。現在は森のように見えるが、古墳の斜面には石が敷き詰められ、墳丘の平面に埴輪(はにわ)が置かれていたという。
 大手ゼネコン大林組が試算したところ、仁徳天皇陵を古代工法で建設すると、工期は15年8カ月に及び、作業員数が延べ680万7000人(ピーク時で1日当たり2000人)、総工費は796億円に上った。
 古墳群には仁徳天皇陵以外に、応神天皇陵(長さ425メートル)や履中天皇陵(同360メートル)などの巨大古墳が含まれ、被葬者も中国の歴史書「宋書」に記された「倭(わ)の五王」に関係すると考えられている。被葬者は学術的に確定していないが、調査したユネスコの諮問機関から真実性に疑念を呈するような指摘はなかった。
 大阪府立近つ飛鳥博物館の白石太一郎名誉館長は「王墓の在り方から、当時の中国は中央集権的な専制国家だが、日本は『ヤマト政権』という首長連合の政治体制で、古墳の造営は密接に関係している」と指摘。200メートル以上の前方後円墳11基について、「河内や和泉地域の勢力が王権を掌握した段階に造られた」との見方を示す。
 大陸との海上貿易の発着点にある大阪湾に接する平野に築かれた古墳群からは、金銅製の馬具や鉄製の甲冑(かっちゅう)、刀剣、ガラス器などが出土。朝鮮半島から中国、ペルシャの影響を受け、東アジアと交流があったことを物語る。
 白石氏は日本各地の古墳についても「文化財保護法による史跡としての保存、活用をさらに推進していくべきだ」と訴える。