Communications Biology
ウミガメの腫瘍とヒトのがんには、同じような遺伝的脆弱性があることを報告する論文が、今週掲載される。
この新知見は、ウミガメの腫瘍の治療にヒトのがん治療法を使用する道を開くかもしれない。
ウミガメの集団は現在、絶滅の脅威にさらされているが、
線維乳頭腫症(フィブロパピロマ)と呼ばれる致死性の悪性腫瘍が保全活動の妨げになっている。
生息地の破壊をはじめ、人間が関わる活動が、この腫瘍ウイルスが広まった原因の1つであり、
その他の野生生物の新興感染症の蔓延にも関係している。
しかし、どの遺伝子が腫瘍の発生を促進するかなど、
このウイルスと宿主であるウミガメとの間の動態については、ほとんど分かっていない。
今回、David Duffyたちの研究グループは、
ヒトのがんに現在用いられているプレシジョン・メディシンの手法を用いて、
ウミガメの線維乳頭腫症の腫瘍が増殖する原因となる分子シグナル伝達事象を調べた。
Duffyたちは、腫瘍発生過程で起こる遺伝子発現の変化を調べ、
宿主の遺伝子の発現が変化することで腫瘍の発生が促進され、
ウイルス由来の遺伝子の影響は受けていないことを明らかにした。
Duffyたちは、宿主のこうしたドライバー遺伝子が、
ヒトのがんの治療に用いられている抗腫瘍療法の標的になる可能性があると考えている。
今回の研究結果は、発生頻度が低く、研究が進んでいない野生生物の病気に取り組む上で、
プレシジョン・メディシンの手法を用いることの力を実証している。
原文
http://dx.doi.org/10.1038/s42003-018-0059-x
Nature Research:
https://www.natureasia.com/ja-jp/commsbio/pr-highlights/12543