ビワなどの種子(たね)や未熟な果実には、天然の有害物質が含まれています。
本年度、ビワの種子を粉末にした食品から、天然の有害物質が高い濃度で検出され、製品が回収される事案が複数ありました。
ビワの種子が健康に良いという噂(うわさ)を信用して、有害物質を高濃度に含む食品を多量に摂取すると、
健康を害する場合があります。
一方、熟した果肉は、安全に食べることができます。

〈ビワの種子には、天然の有害物質が含まれています〉

ビワ、アンズ、ウメ、モモ、スモモ、オウトウ(サクランボ)などのバラ科植物の種子や未熟な果実の部分には、
アミグダリンやプルナシンという青酸を含む天然の有害物質(総称して、「シアン化合物」と言います。)が多く含まれています。
一方で、熟した果肉に含まれるシアン化合物はごくわずかです。果実を未熟な状態で食べてしまったり、
果実を種子ごと食べてしまったりすることは稀(まれ)ですので、通常、果実を食べることによる健康影響は無視できます。

しかし、種子を乾燥して粉末に加工などした食品の場合は、シアン化合物を一度に大量に食べてしまう危険性が高まります。
高濃度のシアン化合物が検出されて回収が行われているビワの種子粉末食品のうち、特に濃度が高いものでは、
小さじ1杯程度の摂取量でも、健康に悪影響がないとされる量を超えて青酸を摂取してしまう可能性があります。

ちなみに、青梅は、熟していないのでシアン化合物が高濃度に含まれていることが知られており、
そのままでは食べるのに適していませんが、梅干しや梅酒、梅漬けに加工をすることにより、シアン化合物が分解し、
大幅に減少することが知られています。

種子を単純に乾燥・粉末にしたような食品では、シアン化合物はほとんど分解せずに残っている可能性があります。

〈アミグダリンは健康に良いわけではない〉

インターネットや書籍の情報では、シアン化合物の一種であるアミグダリンを「ビタミンの一種」、「ビタミンB17」と称したり、
「がんに効果がある」とうたったりして、アミグダリンが健康に良い成分としているものがあります。
しかし、アミグダリンをビタミンとする説は現在では明確に否定されている他、
アミグダリンの有効性に関する情報については科学的に十分な根拠はありません。
むしろ、アミグダリンから体内で青酸ができる可能性があるため、健康への悪影響が懸念されています。
実際に、海外では、アミグダリンを含む生のアンズの種子を体に良いとして大量に食べたことによる健康被害や死亡例が複数報告されています。

〈アミグダリンとは〉

アミグダリンは、ビワなどのバラ科の植物に天然に含まれている主なシアン化合物で、
マンデロニトリルに2個のグルコース(ブトウ糖)が結合した構造を持っています。
植物に天然に含まれる酵素や人の腸内細菌により、マンデロニトリルとグルコースに分解され、
マンデロニトリルがさらに分解されると、ベンズアルデヒドと青酸ができます(図参照)。
青酸は、一度に大量にとると、頭痛、めまい、悪心、おうとなどの中毒症状を起こし、
場合によってはけいれんや呼吸困難になり、死に至ることもあります。


なお、アミグダリンが分解してできるベンズアルデヒドは、バラ科の果実、杏仁(アンズの仁)、アーモンド(バラ科のヘントウの仁)等に特徴的な甘い香りの成分です。

画像:熟したビワの果実と種子
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/attach/img/loquat_kernels-1.jpg
画像:ビワの種子
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/attach/img/loquat_kernels-2.jpg
図.アミグダリンから青酸ができるまでの工程
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/attach/img/loquat_kernels-2.png

農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/loquat_kernels.html