【研究】「ちょっと盛られた」臨床試験の気付き方 臨床試験にかかわるすべての関係者へ
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奥村 泰之(医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構研究部 主任研究員)
ランダム化比較試験のエビデンスの質は,最高峰と考えられている。
しかし,私たちが臨床試験の研究成果を読むとき,たとえ有名な学術誌に掲載されている場合であっても,
その研究成果の主張をうのみにするべきではない。なぜなら,研究者の期待に添わない否定的な研究成果が得られた試験の50%は,
肯定的な研究成果が得られたかのように,アブストラクトの結論部を「盛って」報告しているからである1)。
「研究成果の解釈をゆがめ,読者を欺く執筆術」は粉飾(spin)と呼ばれる1〜3)。ここで,粉飾とは,
@主要評価項目に関して統計的有意性が得られなかった場合に,実験的治療法の有益性を強調する報告戦略,あるいは,
A主要評価項目から読者の注意をそらす報告戦略と定義されている。
「ちょっと盛られた」臨床試験
この問題への理解のために,アブストラクトの結論部が粉飾された臨床試験の事例を紹介しよう
。2016年8月,「自閉症に効くオキシトシン,使用量増が症状改善 福井大」(朝日新聞医療サイト「アピタル」)といった記事が,
さまざまな媒体で報道された。記事を読むと,ホルモンであるオキシトシンを自閉症患者に点鼻する臨床試験が行われ,
その結果,一定量のオキシトシンを点鼻された人は「視線が合う」など,症状が改善したと書かれている。
さて,記事の元になった論文を確認してみよう。
リサーチクエスチョンは,オキシトシンスプレー(高用量/低用量の2条件)による治療を受けた自閉症患者は,
経鼻プラセボによる治療を受けた患者と比べて,割り付けから12週時点の症状〔重症度の印象スコア(CGI-S),
改善度の印象スコア(CGI-I),かかわり指標スコア(IRSA)〕が優れて改善するか,というものである4)。
パイロット試験の結果,3つの主要評価項目ともに,オキシトシン群とプラセボ群との間に,統計的に有意な差は認められなかった。
一方で,アドヒアランスが良好な男性というサブグループに着目したところ,
改善度の印象スコアに関するプラセボに対する統計的有意性は,高用量オキシトシンでは認められた一方で,
低用量オキシトシンでは認められなかった。これらの結果から,アブストラクトにおいて
「青年における自閉症に対するオキシトシンの有効性は,オキシトシンの用量と遺伝的個人差の影響を受けることを示唆する」と結論付けている。
これが定番の粉飾法
筆者が確認する限り,この臨床試験の結論では,定番の粉飾法が活用されている。
定番の粉飾法とは,主要評価項目に統計的有意性が得られていない優越性試験において,
@統計的有意性が得られた他の結果(サブグループ/副次的評価項目/群内の差)に焦点化すること,
A主要評価項目が有意ではない結果から,両群ともに同等の有効性を有すると解釈すること,
B主要評価項目が有意ではない結果にもかかわらず,治療の有益性を強調することである2)。
前途の臨床試験において,試験参加者全体では症状改善効果が認められなかった事実に触れずに,
症状改善効果が認められたサブグループに焦点化して結論付けたことに科学的妥当性はなかったであろう。
粉飾せずに,「自閉症へのオキシトシンは,プラセボに対する症状改善効果の優越性が認められなかった」と結論付けることが望ましかったと思われる。そもそも,サブグループ分析の結果を信用できる状況は限られているため注意が必要である1)。
続く)
週刊医学界新聞
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03246_03 続き)
計画は変幻自在
さらに,この臨床試験について,臨床試験登録を使って,主要評価項目の変遷を確認してみよう。
UMIN臨床試験登録システムに,研究計画の変更履歴が公開されている。
まず,症例登録の開始段階(2011/3/8)における主要評価項目は,「臨床症状評価尺度各種,MRI検査」など多数の項目が設定されていた。
次に,症例登録から2年経過した段階(2013/4/8)における主要評価項目は,「かかわり指標スコア」の1項目に限定されていた。
ところが,試験終了から2か月後の段階(2014/5/14)における主要評価項目は,論文と同じ3項目に設定されていた。
なぜ,主要評価項目が変遷しているか,その理由はわからない。
しかし,主要評価項目に変遷がみられる臨床試験では,
統計的有意性が得られた副次的評価項目に焦点化するという粉飾法が活用されている可能性が否めないため,注意が必要である。
問題解決に向けて
結論が粉飾された臨床試験の主張には科学的妥当性がないものの,研究者にとって粉飾の自由が担保されているかのような状況がある。
粉飾は,ヘルシンキ宣言第36条に抵触し得る行為とは考えられるが,研究不正や触法行為といった研究者生命を脅かすほどの行為とはみなされていない。
編集者への手紙(letter to the editor)による指摘を通して粉飾された臨床試験が論文撤回されるという事例もあるが,
粉飾の事実が第3者によって指摘されること自体,希少な事例である1, 5)。
つまり,粉飾された臨床試験は,学術誌における査読の関門さえ突破してしまえば,
その後,アカデミアによって自浄されることが期待できないのである。粉飾がまん延し得る環境が,十分に整ってしまっている。
粉飾された臨床試験がまん延しているため,私たちが臨床試験の研究成果を読むときには,
@サブグループに焦点化して治療の有益性を強調した結論付けをしているなど,主要評価項目の結果と結論に整合性があるか否か,
A主要評価項目など,研究計画に変遷がみられるか否かを確認すべきである。わずかな注意さえあれば,
誇大広告と化した臨床試験をたやすく判別できるようになる。
臨床試験にかかわるすべての関係者は,こうした事実を認識し,粉飾問題対策を行う必要があるだろう(図)。
臨床試験の研究代表者や共同研究者は,出版倫理や臨床疫学の知識向上に努める必要がある。
また,編集委員会は,ゲートキーパー機能を強化するため,この問題を査読者などに周知することが求められよう。
臨床試験の読者も,粉飾の事実に気付いたときは,編集者への手紙などで注意喚起するなど,出版後の再評価機能を発揮することが期待される。
特に,資金提供者やメディア関係者が,再評価機能を発揮できれば,粉飾問題解決の大きな力になるだろう。
http://www.igaku-shoin.co.jp/contents/picture/paper/nwsppr/n2017dir/n3246dir/n3246gif/n3246_03.jpg
まずは,臨床試験にかかわるすべての関係者が
「結論がわい曲されたエビデンスで医療が変わると,国民に不利益が生じ得る」と理解することから始まると筆者は信じている。
臨床試験の実施に伴う,多くの人の善意と時間と資金を無駄にしないために,粉飾問題の解決に向けた総合的な取り組みが求められる。
週刊医学界新聞〔寄稿〕
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03246_03 >>3
マスコミで例えると、報道しない自由や発言の一部を切り取って歪曲した報道が横行しているからちゃんとしようって事。 真面目な研究成果に
癌だの認知症だの効率100%だのといったキャッチーなタイトルをくっつける犯人は誰なの? 医学生物学論文の70%以上が、再現できない!
Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2013.131128
原文:Nature (2013-08-01) | doi: 10.1038/500014a | NIH mulls rules for validating key results
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v10/n11/医学生物学論文の70%25以上が、再現できない!/48353 まあ研究者の立場としては
金もらって働いてるから嘘にならない誘導は
理解できる
問題は、査読がまぬけで記者がバカなことではと擁護してみるテスト ちゃんと論文読めば明らかにわかるものを
粉飾とまで評するのはいかがなものか
と思うけど
この類のアブストの盛りなんて
通常営業だと思うが。
単に科学不信を煽りたいだけの
迷信発信系記事に
見えるのは自分だけ? >>13
「マスコミは偏向報道を繰り返すけど、自分でネットを使ってファクトチェックをすればいいのでどうってことない」
と同じ論理構造をしてるけど、そういう立場? >>1
文部科学省による研究報告のコミュ力表現指導を批判するな! 俺はほぼアブストラクトしか読まないわ 気を付けよう
NHKでも自閉症にはオキシトシンスプレーが効果的って言ってたけど
データだけ見るとプラシーボだったって事だよな NHKでも有能者が確認してるはずだけど
有名論文誌に載るとデータまで見ないわな
研究者が、都合の良いデータのみで結論を書く気持ちはわかるけど
再発させないために、見せしめで処罰すべき
信じて高価なオキシトシンスプレーを購入し続けてる人はいると思う
ニュースで大きく報道しないと、今後も買い続ける可能性がある 嘘の報告をしたらその薬が正式採用されたとき多くの患者の迷惑になるというような
ことは考えないのかね。 アブストラクトしか読まない人が悪い
再現しようとする人はちゃんと読む人だから、アブストラクトでどんなに盛っても関係ない
これは、非アカデミア向けの注意だな >>18
儲かればいいんだろうな。
医者も薬剤師も志が高いのって一握りだよねほんと。 この人は医療統計の専門家なのかな。医師免許もってないし、早稲田の二文(夜間)出身で日大で学位取ってる。
論文もあるけど、自分で実験をちゃんとやった感じの論文がない。
つまり統計データを鵜呑みにして統計処理しました的な論文しかない。すべてを統計データを作った他人に責任転嫁している。
実験の難しさや、再現性に関連するパラメータの多さを認識してないから、データセットが揃ってるか揃っていないかでしか物事を判断できない。
本当の捏造家は、完璧に揃ったデータセットを出してくる。統計処理をしても各種の統計指標に異常な値が出ないかまでチェックしてくる。
そこまでする方が実際に実験をして再現性を出すより簡単だからだ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています