NASAが、地球に衝突する軌道を接近中の小惑星に人工物をぶつけ、その方向を変えさせようという宇宙機Double Asteroid Redirection Test(DART)の実験を、2022年に実施すると発表しました。わかりやすく言えば映画「アルマゲドン」と同じことを現実にやってみようということです。
とはいえ、映画のようにおっさんが小惑星に着陸して穴を掘り、そこに爆弾を埋め込んで「娘をよろしくな」なんてことをしていては費用も人命も大量に消費することになります。NASAの実験計画は、無人の宇宙船を送り込んで衝突させ、その衝撃がどれぐらい小惑星の軌道を変えられるかを確認する真面目な内容です。
インパクターとしての役割を担う宇宙機DARTはすでに設計が始まっており、完成すれば2022年には小惑星ディディモスAと、その周りを1.1kmほど離れて周回するディディモスB(通称ディディムーン)に向けて打ち上げられます。ディディモスは直径750m、ディディムーンは直径150mほど。DARTはディディムーンに秒速約6000mで衝突することでその軌道を変化させます。また2024年にも再度衝突実験を行うとのこと。
DARTプログラムに携わるTom Statler氏は「ディディモス二重小惑星は衝撃による軌道の変化を容易に見ることができる、最適な実験台だ」と語ります。
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実は地球に毎日降り注いでいるといいう小惑星。そのほとんどは誰もが知っている流れ星として消えてしまいます。しかし過去にはシベリアのツングースカに落ちた小惑星によるものとされる大爆発があり、2013年にはチェリャビンスク隕石の衝撃波で発生した被害例もありました。
NASAは地球に衝突すれば大きな被害をもたらすと予測される小惑星の93%をすでに特定しているとされます。DARTによる実験はそれらがもし地球に向かってくるときに向けた"備え"として、もしかすると人類滅亡の危機を救う、いわば地球防衛軍になりうるかもしれません。
なお、近年は小惑星衝突に関する知識を学ぶイベントAsteroid Dayイベントが世界各地で開催されるようになりつつあります。Asteroid Dayには例年、クイーンのブライアン・メイが天文学者の立場で参加しており、人気の天体物理学者ニール・ドグラース・タイソン、惑星協会のビル・ナイ、その他著名宇宙飛行士らも登場しています。今年は6月30日に開催され、日本でもこれにちなんだ行事がいくつか開催されていました。
2017年7月6日, 午後07:30
http://japanese.engadget.com/2017/07/06/nasa-dart-2022/