●キング・オブ・嫌がらせの「フォールマスター」
1991年発売のスーパーファミコン用ソフト『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』で初登場した「フォールマスター」は、手首から先だけの姿をした「手だけのモンスター」です。『ダメおやじ』や『BARレモン・ハート』などで有名な古谷三敏先生が『手っちゃん』という、手だけの手っちゃんが主人公のホームコメディマンガを描いていますが、見た目はまさに、その手っちゃん。ただし手っちゃんは笑いにあふれた生活を送っていましたが、「フォールマスター」には笑えるところはひとつもありません。
「フォールマスター」はダンジョンのなか、おそらく天井にでも張りついているのでしょう。頭上から、リンクを捕まえようと落ちてきます。登場の前兆として足下に影が現れるので、すかさず動いて影から外れればいいのですが、難解なギミックに挑んでいる最中では気付いたら捕まえられていたという事態もしばしば。では、捕まえられたらどうなるか? 少々のハート(体力)が削られるくらいならいいのですが、なんとダンジョンの入口まで戻されてしまうのです。ダンジョン深くまでもぐるためにどれだけのギミックをくぐり抜けてきたことか……それがすべてチャラ。こんなことをしていったい何が楽しいんでしょうか、やつは。
●おいはぎ根性マジ勘弁! な「ライクライク」
1986年発売の第1作『ゼルダの伝説』から登場している老舗モンスター「ライクライク」。特殊能力は作品ごとに多少の違いがありますが、共通しているのは「おいはぎ体質」だということです。身体はグニャグニャした筒のような形で、ゆっくり移動しているかと思いきや、こちらが近づくといきなり丸呑みしてくるという凶暴モンスター。ふいをつかれてそれだけでもショックなのに、さらにぜん動運動のような動きで、生きたまま消化吸収されているかのような絶望まで味わわされます。しかもその後、口に合わないとでもいうかのように、ペッと吐き出されてしまうのです。助かったとはいえ、なぜか猛烈な屈辱感が漂います。
被害はそれだけではありません。むしろこちらの方が大問題なのですが、この「ライクライク」、吐き出すときに盾を奪ってゆくのです。作品によっては盾だけでなく、洋服やルピーなどまで奪われることも。「ライクライク」なんてかわいい名前のくせして、まさに、おいはぎの所業。この人でなし! あ、モンスターでした。
ちなみに「ライクライク」の名前は、「蓼食う虫も好き好き」のことわざをもとに命名されたのだそうです。「蓼(盾)食う虫も好き好き(ライクライク)」。制作陣のテンションがノリノリだったのか、もしくは徹夜続きでぼーっとしていたのか、計りかねるところです。
●生理的に無理!「デドハンド」
「デドハンド」は、1998年発売のNINTENDO64ソフト『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に登場する中ボスです。見た目から攻略の仕方から、すべてが嫌すぎる生理的に無理なモンスターなのですが、中ボスである以上戦わざるをえず、思い出すだけで泣きそうです。
「デドハンド」のいる中ボス部屋に入ると、地面からたくさんの細長い白い手が生えています。よく見ると白いだけでなく血のように赤くにじんだ部分もあり、かなり不気味なのですが……本体は地面の下に隠れており、この不気味な手に捕まらない限り引きずり出せないのです。ビビりながらも意を決して自ら捕まりにいくと、頭をがっちりとホールドされて、思っていた以上に怖い! 地面から出てきた本体も、白い身体に血しぶきを浴びたような風体でじりじり迫ってくるので怖すぎる! 「デドハンド」を倒すには、この、自ら捕まっては引きずり出して攻撃するという工程を何度も繰り返さなければならないのです。自ら攻撃されにいくことは、不意打ち攻撃の何倍も怖いもの。それを強いる「デドハンド」は生涯のトラウマモンスターです。
(一部略)
マグミクス11.6
https://magmix.jp/post/66150