中央公論 2020年3月号
企業も大学も「機微技術」の管理を急げ
米中技術覇権で問われる「アクセス天国・日本」の対応
細川昌彦
ttp://www.chuko.co.jp/chuokoron/2020/02/20203_1.html

 「シャドウ・ラボ」の恐ろしさ

 もう一つ米国の対中・技術管理のうえで重要なポイントがある。それは研究開発段階から中国への技術流出を
阻止することだ。米国の大学は中国による国家主導の技術獲得の主要なターゲットとされており、対応が急務と
なっている。
 2008年にスタートした中国政府による「千人計画」がある。中国政府主導の海外の研究人材の招致プログラムで、
米国にいる中国人研究者が主な対象だ。これが組織的な技術流出に利用されることを米国は警戒している。
 米デューク大学の中国人研究者もその一人だった。米国防省の受託研究で特殊素材を使った「透明マント」の
研究情報を窃取して中国に帰国後、中国政府の支援を受けている事件は有名だ。
「シャドウ・ラボ」という、中国による組織的な技術窃盗を表す言葉がある。盗んだ情報をもとに、研究室にあった
装置のコピーを中国国内に作って、研究室をそっくりそのまま再現するのだ。
 そのため米国では中国人研究者に対するビザ発給を厳格化するだけでなく、大学でも自主的な管理強化の動き
が強まっている。多くの大学がファーウェイからの資金提供を拒否し、共同研究の実施を停止している。