どれ程の量の改良剤が必要なのかについてヘドロを採取して検査せねばならないのだが、発注者はそんなことをせずに、いい加減な数字の量を設計書に書き入れていた。
それは池のヘドロが固いコンクリートの塊になって、発掘する際には削岩機が必要になる程の量であった。
これに気付いた発注者はD社にヘドロの採取と検査をさせて、改良剤の適切量を調べさせた。
しかしこれに要した費用は、発注者は全く出さずにD社にすべて負担させた。
ヘドロ改良工事については、まだ話が付け加わる。
発注者は改良工事に使う地盤改良剤を地元要望があったからとして「環境に優しいものを使え」と指示した。
D社は当然どういう製品の改良剤を使えばいいのかと聞くが、発注者は「環境に優しいものを使え」の一点張りで、具体的にどの製品かを指示しなかった。
困ったD社はいろいろ探して「環境に優しい」と書かれた製品の広告を見つけ、これではないかと発注者に尋ねた。
しかしそれは当初設計にある製品より三倍以上も高価なものだった。
結局、発注者は「環境に優しいものを使え」という指示を撤回し、当初設計の製品を使うことになった。その間、何ヶ月もの時間を浪費したのであった。
当初設計では池の土手も発掘の対象であった。
土手を除去するのであるから、大雨に備えて仮設堤防が必要になる。
しかし発注者は設計にこの仮設堤防工事を入れ忘れていた。仮設堤防が必要性は常識で当たり前のことだから、発注者側の一方的ミスである。
この仮設堤防の造成費だけで千万円以上は必要になる。
うっかりミスで済まされるような金額ではない。
設計にないから、当然D社との契約にも入っていない。