https://r.nikkei.com/article/DGXMZO33982240Z00C18A8000000
【ワシントン=中村亮】米国務省は8日、ロシア政府が3月に英国で起きたロシア元情報機関員の暗殺未遂事件で化学兵器を使用したと断定し、新たな経済制裁を発動すると発表した。22日にも米国の安全保障に関わるモノや技術の輸出を禁じる。今後も化学兵器を使用する可能性があると判断すればロシア民間機の米国発着を禁じるなどの追加措置を検討する。
米政府は1991年に制定された生物化学兵器の使用を禁じる法律に基づいて制裁を科す。3月の事件を受けてロシア人外交官を国外追放したが経済制裁でさらに厳しい措置をとる。ロシアは事件への関与を否定している。トランプ政権は3月と4月にも2016年の大統領選に干渉したとしてロシアに対する制裁を発動していた。
米メディアによると、制裁は2段階で発動される。まず22日にも航空機に使う電子部品などの安全保障に関わるモノや技術の輸出を禁じる。いままでは米政府が案件ごとに輸出を許可していた。
第1段階の制裁発動から約3カ月以内に、ロシアから化学兵器の使用停止の確約や国連による査察への同意が得られなければ追加措置を検討する。アエロフロート・ロシア航空の米国発着やほぼすべてのモノの輸出入を停止する可能性がある。
トランプ政権にはロシアへの強硬姿勢をアピールする狙いがありそうだ。トランプ米大統領は7月中旬にロシアのプーチン大統領と会談し、米ロ関係の改善に意欲を示した。だが16年のロシアによる大統領選への干渉を否定したため、身内の米共和党やメディアから弱腰だとの批判が相次いだ。トランプ氏が模索した今秋のプーチン氏のワシントン訪問も来年以降に延期していた。