3月31日、国税庁の公式サイトがリニューアルし、レイアウトなどが変更されたのだが、そこに大きなミスが発覚。グーグルなどの検索エンジンで見たいページを開くと、勝手にトップページまで飛ばされるエラーが発生したのだ。
これはリニューアルとともに、全ページのアドレスを変更したことが一因だ。過去のブックマークも使えなくなるなど、利用者にとっては不便極まりない状況が続いた。
実際に国税庁のサイトを開いてみると、トップページにはサイト内のページを検索する機能があるが、そこで検索するとリニューアル前のアドレスがヒットし、トップページに戻されてしまう。まるで「無限ループ」に陥った感覚だった(4月10日時点)。
なによりも問題なのは、決算時期である3月末にエラーが起こったことだ。確定申告は3月15日に締め切っているが、消費税申告の期限は4月2日である。締切間近に調べたいことがあってもページにたどりつけず、肝を冷やした人も多いだろう。
そして年度始めは人事異動などの関係で、税務の実務はかなり忙しい。国税庁のサイトには各種通達など、納税上必要な情報が多数ある。それらをブックマークして使っていた企業の税務担当者にとっては由々しき問題である。
このリニューアルの仕様やスケジュールは、発注した国税庁のシステム担当者と受注した企業の担当者が打ち合わせて、発注者の意向に基づき決まっているはずだ。
国税庁の役人としては、予算を消化するために、3月の年度内にリニューアルを終わらせたかったのだろう。利用者のことを考えていない「お役所仕事」で、3月に道路や水道の工事が増え、渋滞が起こるのと同じようなことが起こったわけだ。
今回のサイトリニューアルは、「電子政府指針等を踏まえ、ホームページの更なる利便性の向上を図るため」としている。
2000年11月に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が制定され、電子政府化が進められるようになって17年経ったが、依然として各省庁にはITスキルに長けた人材が不足し、そのことがさまざまな弊害を起こしている。
国税庁も例外ではない。国税の電子申告が導入されたのは'04年だが、その際も導入にかなり手間取った。おまけに、いまでもICカードリーダライタの別途購入を必要とするなど、電子申告には利用者負担の面で多くの障壁がある。国税庁は「簡単に申告できる」としているが、そうは思えない。
昨年12月には省庁の各サイトの8割が不正アクセス対策をしていないことが明らかになるなど、依然として省庁のサイバースキルは低い。今回のトラブルも、システムの専門家からすれば初歩的なミスだが、おそらく年度内予算の消化ありきで準備不足だったのだろう。
ちなみに、リニューアル後のページはいまどきのサイトデザインではなく、まるで新しさを感じない。よく言えば誰にでも使いやすいレトロデザインなのかもしれないが、一般企業でこのような手抜き作業を「リニューアル」としたら、担当者は厳しく批判されるだろう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55369