CAを巡っては、フェイスブックが学術目的で提供した5千万人規模の利用者情報を、英ケンブリッジ大教授から不正に入手していたと米紙ニューヨーク・タイムズなどが報道。2016年の米大統領選でトランプ氏の陣営に有利に働くように活用したとされている。
これとは別に、英民放チャンネル4は20日にかけて、アレクサンダー・ニックス最高経営責任者(CEO)に対するおとり取材の内容を報じた。スリランカの選挙で助言を求める顧客を装った記者に、ニックス氏はどんな手が使えるか紹介。政敵に賄賂を送ったり、女性を仕向けて誘惑させたりし、その隠し撮り映像を公開することで打撃を与えられると説明した。
ニックス氏はこうした手法が実例であると示唆した。また別の幹部は、データ分析に基づく情報戦術を、これまで世界の数多くの選挙で手掛けてきたと実績をアピールした。13年と17年のケニア大統領選では当選したケニヤッタ氏の陣営を支え、演説原稿の準備や調査をはじめ「全てを演出した」とも明かした。
CAは20日夜(日本時間21日未明)、ニックス氏を停職にしたとの声明を出した。チャンネル4のおとり取材で語られた内容は「会社の価値観や事業を反映したものではない」と強調。コメントや一連の疑惑に関する調査を終えるまで、CEO職から外すことを取締役会で決めたという。
CAは、報じられたような不適切な手法で選挙工作を行ったことはないと主張した。フェイスブックの個人情報問題についても、データの不正取得や悪用の事実はないと否定している。
だが、16年の米大統領選でトランプ陣営を支えた手法への疑念はくすぶる。チャンネル4は20日、ニックス氏が共和党候補だったトランプ氏と「何度も会った」と話す場面などを追加で放送。おとり取材の記者に「全ての調査、データ収集、分析、標的の絞り込み、デジタルとテレビキャンペーンを行った」と述べ、勝利に重大な役割を果たしたと誇示していた。
CA幹部は新たに放送された映像の中で、トランプ氏と争った民主党のヒラリー・クリントン候補を「いんちきヒラリー」と嘲るキャンペーンを同社が主導したと打ち明けている。ソーシャルメディアの工作で身元がばれないような偽装や、証拠が残らない特殊なメールシステムなどに言及する場面もあった。実際に使われたかは不明だが、疑惑は深まっている。
2018/3/21 12:22
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28404710R20C18A3000000/