企業サイトを洗練させると、学生の企業訪問が増える。ただ、社長や社員の服装がビミョウだったり、オフィスが古臭かったりすると、学生のテンションは一気に下がってしまうという。今や、「就業中はスーツ着用が義務」の会社も敬遠されがち。学生は、服装やインテリアから何を感じ取るのか。

働く社員によって、企業イメージがつくられる
企業で働く社員によって企業のイメージがつくられる例は、サービス産業に多い。

航空会社のキャビン・アテンダント(CA)はその好例だ。デザイン化された制服に身を包み、身長(※)は日系航空会社ならおよそ158センチ以上、外資系航空会社なら160センチ以上で、平均的体重のスタッフが勤務する。英語など外国語の素養も要求され、りりしく働く女性の姿が航空会社のイメージ形成に大きく貢献している。

別の意味合いで、女性スタッフを売り物にしている企業がフーターズだ。1983年10月にアメリカのフロリダ西海岸にあるクリアウォーターで、レストランの経営経験がない6人のビジネスマンが居心地の良い店ができないかと考えてつくったのが、カジュアルなアメリカンダイニング&スポーツバーのフーターズだ。

チアリーダーをイメージした女性スタッフ「フーターズ・ガール」が人気を呼び、フーターズはアメリカを中心に、28カ国で430店舗以上を展開している。アメリカンフットボールはアメリカ国内で絶大な人気を誇り、多くのファンがいる。ゲームの合間に登場するチアリーダーも注目の的だ。そのチアリーダーにヒントを得て生まれたフーターズ・ガールのユニフォームは、オレンジ色のショートパンツに、“胸の谷間”を強調したTシャツ姿が売り物だ。

そのためフーターズは、別名ブレストラン(胸を意味するBreastとレストランのRestaurantを掛け合わせた造語)とも呼ばれ、女性からはひんしゅくを買うこともある。だがフーターズ・ガールのイメージを替えた人材もいる。シナボンなどを傘下に持つフォーカス・ブランズ(Focus Brands)社のトップを務めるのはカトリナ・“キャット”・コールさんは元フーターズ・ガールだ。彼女はフロリダ州で高校生だった16歳のときからフーターズ・ガールとして働き、その力量を買われてフーターズの世界市場の拡大に貢献。その後シナモンロールを販売するシナボンのCOO(最高執行責任者)に抜擢された後に、現在の地位を得たという経歴を持つ。こうした逸材が登場すると、“胸の谷間”を売り物にした女性だけが働いているわけではないようにも思える。

企業イメージで、人材獲得力が決まる
日本の中堅・中小企業では、現在深刻な人手不足に直面しているが、人が集まらない理由に、経営者が気づいていない企業のブランドイメージを低下させる負の因子がある。

人が集まらない企業の典型例としては、

・就業中はビジネススーツの着用が義務付けられている
・幹部から社員までファッションセンスに乏しい
・オフィスは旧来型の事務机を使い、インテリアへの配慮がない
・上司に背中を見せて働くデスクの配置になっている
・社用封筒・レターへッド・名刺など社用ツールがデザイン化されていない
・トイレのしつらえが古く快適でない。男女別に分かれていない

といった特長がある。

こうした旧態依然としたオフィス環境から、その会社が硬直化し、変化対応力に欠ける企業文化を持つことを敏感に感じ取り、入社するのをためらう人材が増えている。この傾向は大企業でも同様だ。

一方、企業規模が小さく、社歴が浅くても、人材が集まる会社がある。その特長は、

・社員がカジュアルウエアで働いている
・オフィスは知的労働生産性を高めるように配慮され、快適なインテリアになっている
・自由な社風であることがオフィス空間から伝わってくる
・制服のある企業では、デザイン化され独自のユニフォームを採用している
・トイレや社員食堂が快適で、独自の工夫がある

といった点だ。

負の因子を持つ企業が、いかにホームページをデザイン化し、魅力のある企業に見せようとしても、会社訪問した段階で若者たちは柔軟性に欠ける企業であることを読み取ってしまう。企業のブランドイメージは顧客に対してはもちろん、人材を集める上でも欠かせない要素になっている。
http://president.jp/articles/-/24017