日本企業による海外企業の買収をめぐっては、東芝がアメリカの原子力子会社の経営破綻などで昨年度の決算が9600億円余りの最終赤字に陥ったほか、日本郵政もオーストラリアの物流企業の業績が悪化したことでおよそ4000億円の損失を計上するなど、期待していた効果をあげられないケースが相次いでいます。
こうした中、経済産業省は、来週、外部の有識者で作る研究会を設置し、同じようなケースを防ぐためのガイドラインの策定に向け検討を始めることになりました。研究会は、企業統治に詳しい大学教授や弁護士、それに公認会計士などがメンバーで、海外企業の買収を積極的に手がけている大手企業の役員などから直接、聞き取り調査を行うということです。
そのうえで、海外企業の買収を意思決定するにあたって経営陣が留意すべき点や、買収の効果を十分に得るための経営管理の手法などをガイドラインに具体的に盛り込むことにしています。
経済産業省は、今年度中にガイドラインを公表し、海外進出を通じて成長力の強化を図る企業の支援につなげていきたい考えです。
海外の企業買収は過去最高上回るペース
人口減少による国内市場の縮小を背景に日本企業は収益力の強化を図ろうと、海外の企業買収を一段と加速させています。
企業買収の仲介や助言を行う「レコフ」のまとめによりますと、ことし1月から先月までに日本企業が海外企業を対象に行った買収や出資の件数は合わせて378件で、去年の同じ時期に比べて14件、率にして3.8%増えました。
日本企業による海外企業の買収などの件数は、去年、3年連続で過去最高を更新しましたが、ことしはこれを上回るペースで増加していて、10年前の同じ時期の1.8倍の水準となっています。
経済成長が見込めるアジアの新興国や、景気が緩やかに拡大しているアメリカの企業を中心に大型の買収や出資を行うケースが増えているということで、ことし1月から先月までの投資金額は合わせて3兆7000億円余りと、去年の同じ時期の2倍近くに上っています。
今後の見通しについて、レコフは「国内市場の縮小を背景とした危機感に加えて、日本企業はこの数年の好業績で手元の資金を増やしており、海外企業の買収件数は今後も増加傾向が続くだろう」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170824/k10011109201000.html